特集 コットンの日(2)/やっぱり綿100% 再評価の潮流

2025年05月09日 (金曜日)

 サステイナビリティー志向の高まりを受け、天然繊維の代表格である綿への注目が再燃している。なかでも綿100%をうたう製品が売れ筋となっており、各社は機能性や高級感、環境対応を軸に価値訴求型の商品展開を加速している。

〈売れ筋は純綿+独自機能〉

 クラボウは、原綿改質の機能綿糸「ネイテック」を“フラッグシップ糸”と位置付け、拡販に力を入れている。ネイテックは現在、糸の売り上げの3~4割を占めるまでに拡大。これまでインナー用途が中心だったが、UV遮蔽(しゃへい)・遮熱機能の「ネイテック・ダル」の投入でアウターへも広がりを見せ、「年間を通じて売れる」素材として、市場での存在感を高める。

 基本的にはバイオーダーで顧客の要望に沿って供給。単なる糸の売りっ放しではなく「最終製品まで関与し、機能の確実な提供を図る」姿勢が顧客の信頼につながり、受注増へと結び付いている。

 シキボウは、特殊紡績法による絶妙な毛羽コントロール糸「ふわポップ」の販売を加速。糸全体に360度方向から起毛加工を施しており、従来の糸と比較して毛羽落ちや糸抜けが少なく、耐久性に優れる。吸水性や拡散性にも優れ、衣類や寝具などの用途に適し、インナーや靴下といった実用衣料へ販路が広がりつつある。

 同社は富山工場(富山市)、グループ会社のナイガイテキスタイル(岐阜県海津市)を合わせて国内最大規模となる約4万錘を保有。紡績工場の撤退が相次ぐ中、紡績から織布、染色加工まで一貫生産の強みを生かし、技術力と開発力の向上に努める。

 綿100%の素材開発は高度化しつつある。大和紡績は綿100%で高い吸水速乾性とストレッチ性、ソフトな風合いを兼ね備えた新素材「プレミア」を開発した。従来品の「ミラクルドライ」同様の高機能性を維持しながら、樹脂加工を基本的に使わず、特殊な後加工により柔らかさと上品な艶感を実現した。

 速乾性は拡散性残留水分率試験で55分以内、吸水性は5秒以下(JISL1097)と高水準を誇る。抗ピリング性や寸法安定性にも優れ、繰り返しの洗濯でもねじれや縮みが少ない。糸種にはリング紡績とボルテックス精紡を用意し、風合いのバリエーションに対応する。

 綿100%素材への関心が高まる中、日本紡績協会では、国産綿素材の需要振興のために「ジャパン・コットン・マーク」の発信を強めている。近年、素材のトレーサビリティーが重視される中、安心の国産綿素材の印として活用拡大が期待される。ジャパン・コットン・マークは国内で製造した糸・生地・不織布など綿素材を使用している印であり、消費者が安心して商品を選ぶ目印となる。

〈根強く売れる純綿製品〉

 肌触りの良さ、快適性、天然繊維であることの安心感から綿100%の製品に対する注目が高まっている。フジボウアパレルの高級インナーブランド「アングル」の主力シリーズ「アサメリー」はその一つ。上質な超長綿100%の超細番手強撚糸を用いた“麻のような感覚の綿肌着”で、発売から70年以上のロングセラーだ。

 特に「着て初めてわかる着心地の良さ」が高く評価され、中国の富裕層向け輸出が急増。現在では海外販売が国内を上回っている。3月に代官山蔦屋書店(東京都渋谷区)で期間限定店を開いた。初めて商品化したスエットで3万円以上と、高価格帯にもかかわらず若い世代に売れた。

 タオル製造卸大手の内野(東京都中央区)が展開する「マシュマロガーゼ快眠パジャマ」は2014年の発売以降、シリーズ累計出荷数は75万着を超える。価格帯は2~3万円と高価格ながら、睡眠の質を高める“軽さ・柔らかさ・程よい暖かさ”が評価されている。

 最大の特徴は、綿100%の特許素材「マシュマロガーゼ」。三重構造のガーゼが空気層を生み、保温性と通気性を両立。細番手で撚りの少ない糸が肌にやさしく、就寝中の温湿度の変化を抑える効果も実証されている。

 エドウイン(東京都品川区)の日本製ジーンズ「503」は、24秋冬向けで前年比10%増と伸長し、昨秋投入のコットン100%ジーンズが売れ筋。若年層からの支持も高まっており、同社は「トレンド回帰と本物志向の高まりが背景」と分析。高品質な素材や加工、縫製といった“日本製”の強みが支持を集めている。

 綿100%であり、こだわりのモノ作りは幅広い世代から支持を集めつつある。

〈「COTTON DAY2025」開催〉

 日本紡績協会と日本綿業振興会は、今日9日にホテル雅叙園東京(東京都目黒区)で「COTTON DAY2025(第30回コットンの日)」を開催する。今年のテーマは「国境を超えた成長へ」。新たな時代に向けて、持続可能性と国際協調を軸にした綿業の未来を展望する。

 イベントは午後1時に開会し、第1部では日本紡績協会の尻家正博会長(シキボウ社長)の開会あいさつに続き、「トランプ政権の日本企業への影響(仮題)」「米綿の持続可能性」などをテーマに三つの講演が行われる予定だ。

 第1部終了後には、コットンの魅力を体現する著名人を表彰する「コットン・アワード」授賞式を実施。午後3時からはレセプションが予定され、日米を中心とした綿業関係者の交流の場となる。

 昨年のコットン・アワードでは、タレントやモデルとして活躍する藤田ニコルさんへ授与された。

 綿100%素材への関心が高まる中、日本紡績協会は国産綿素材の需要拡大に向け、「ジャパン・コットン・マーク」の発信を強化。イベントを通じて、改めてその認知向上を図る。