合繊メーカー 構造改革の成果出る
2025年05月16日 (金曜日)
合繊メーカーの2025年3月期決算は軒並み増収・営業増益となるなど堅調だった。円安や市況回復の追い風に加え、各社が取り組む事業の構造改革や高度化に成果が出ている。繊維事業も増益や黒字浮上が相次ぎ、力強さを取り戻しつつある。
繊維事業の底力を見せたのが東レ。IFRS基準のため直接比較できないが、繊維事業の売上収益が初めて1兆円を超え、事業利益も大幅増加となる。産業用途は自動車用途が本格回復には至らなかったものの、衣料用途は総じて堅調に推移した。東南アジアと中国の子会社も増収増益となり、韓国子会社は赤字が縮小した。構造改革に取り組むポリプロピレンスパンボンド不織布とポリエステル短繊維も改善が進む。
今期からIFRS基準を採用した帝人は全社ベースでマテリアル事業を中心とした構造改革が進みつつある中、繊維・製品事業は増収・大幅増益。衣料繊維は北米や中国へのテキスタイル・衣料品販売が拡大し、国内向けも堅調だった。産業資材は水処理フィルター向けポリエステル短繊維、人工皮革、生活雑貨が好調だった。
旭化成は、マテリアルセグメントのうち繊維関連事業を含むモビリティ&インダストリアル事業とライフイノベーション事業がともに増収・大幅増益。自動内装材は価格改定に加えて円安の追い風や中国向け合成皮革の販売増加が貢献した。キュプラ繊維「ベンベルグ」、スパンデックス「ロイカ」もともに好調を維持し、増益を確保した。
東洋紡は、環境・機能材事業が減収ながら増益。高機能ファイバーの海外販売が堅調に推移し、不織布も国内生産の見直しを進めたことで収益性が改善している。機能繊維・商事事業も黒字浮上した。エアバッグ基布は価格改定が進み、収益性が改善。衣料繊維は中東民族衣装用織物の輸出が好調だったことに加え、国内生産拠点の集約など構造改革の成果が出ている。
事業再生計画を実行中のユニチカは事業構造改善費用など特別損失計上で純損失が拡大したが、営業・経常ベースでは黒字を回復した。機能資材事業は活性炭繊維やガラス繊維の堅調と不織布の販売回復、ポリエステル短繊維の販売堅調などで黒字浮上した。繊維事業も赤字が縮小した。衣料繊維でユニフォームが堅調に推移し、デニム輸出も回復した。産業資材も堅調だった。
12月期決算のクラレは、繊維事業が増収減益。人工皮革「クラリーノ」の販売が増加したものの繊維資材は欧州の建材用途が低調に推移し、生活資材も不織布、面ファスナーともに需要が低調だった。一方、トレーディング事業は増収増益。繊維関連はスポーツ衣料用途が好調だった。