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綿紡績大手 利益面では改善進む

2025年05月19日 (月曜日)

 紡績各社の2025年3月期決算が出そろった。人工知能(AI)半導体市場の活況を背景に、クラボウと日東紡では各利益段階で過去最高を更新。富士紡ホールディングス(HD)を含め、全体では好業績が目立った。

 一方で繊維事業に限れば、クラボウとシキボウが黒字化し、利益面の改善が進んだものの、全般的には売り上げが伸び悩み、依然として力強さに欠く内容となった。

 クラボウの収益の内訳を見ると、糸が181億円(前期比17・7%増)と大きく伸ばした一方で、テキスタイルが214億円(20・6%減)、製品が139億円(1・8%減)と減収だった。糸では原綿を改質した機能綿糸「ネイテック」の販売が好調。テキスタイルと繊維製品はカジュアル衣料向けの需要減が影響したが、暑熱対策の「スマートフィット」が下支えした。

 7期ぶりの黒字化を果たしたシキボウは、昨年11月に発表した営業利益予想も上回った。特に中東民族衣装向け生地輸出が増益に貢献。シキボウ江南(愛知県江南市)で生産キャパシティーを増強した効果を発揮できた。ユニフォーム事業も不採算取引から撤退し、高通気生地「アゼック」など高付加価値素材の販売が拡大。ユニフォームメーカーの在庫調整が一巡したことも追い風が吹いた。

 富士紡HDの生活衣料事業は、インナー「BVD」など繊維製品で、量販店の店舗減少や節約志向の強まりから苦戦。ネット専用製品の拡販が進み、高級インナー「アングル」の中国向け輸出が堅調だったが、原材料高の影響で粗利率は低下した。

 日東紡の資材・ケミカル事業は、原材料を中心にコストアップの影響を受けたが、値上げなどが寄与し増収増益だった。繊維関連は、アパレルメーカーが生産を抑えたことなどから市況が厳しく、増収ながら減益だった。

 早期にIPO(新規株式上場)を目指す大和紡績は、合繊、産業資材、製品・テキスタイルの3事業がいずれも堅調で増収増益になったもようだ。暑熱対策・衛生関連や自動車・電気部品向けの需要が伸び、米国向けの製品輸出も回復。中期経営計画の初年度として好調なスタートを切った。

 日清紡HDの繊維事業の1~3月期業績は、売上高79億5800万円(11・3%減)、営業損失8300万円(前年同期1億6100万円の損失)で、減収ながら赤字幅は縮小。ユニフォーム事業は企業別注品の受注増加で、ポリウレタン製品「モビロン」など開発素材事業は海外向け受注増などで増収。シャツ事業は減収だった。