大和紡績 着実な成長を実現へ

2025年05月22日 (木曜日)

 大和紡績の2025年3月期連結決算は、売上高627億円(前期比4・8%増)、営業利益20億円(同53・8%増)と、いずれも計画を上回る増収大幅増益となった。今期も売上高、営業利益とも数%の上乗せを計画する。

 有地邦彦社長は20日の記者懇親会で、中期経営計画「グローアップ2026」に沿って「海外市場の積極的な開拓と戦略的な設備投資を通じて、厳しい環境下でも着実な成長を実現する」と述べた。

 3カ年の中計初年度となった24年度では合繊事業が計画を上回ったほか、産業資材、製品テキスタイル両事業がほぼ計画通りだった。

 合繊事業は衛生材用途の原綿販売が底堅く、不織布ではフェースマスクやコスメティック関連の需要拡大が寄与。増収増益となった。一方、ダイワボウレーヨンは原料高騰や中国製品との競合により減収減益。益田工場(島根県益田市)では第4四半期に一部設備トラブルがあったが、通期では計画通りの供給に努めた。

 産業資材事業では、電材向けカートリッジフィルターや物流関連のトラックシートの受注が好調だったものの、土木関連の建設シート、スポンジゴム、カンバスが振るわず減収増益。カンボウプラス(大阪市中央区)はアンチモンを含む防炎剤の大幅な高騰など、原材料高に直面しながらも増収増益を確保した。

 製品テキスタイル事業は、国内市場の低迷が続く中、米国向けインナー製品の販売が堅調で増収増益。ダイワボウアドバンス(東京都中央区)は、主力のスポーツカジュアルが店頭不振の影響を受け減収減益だった。

前向きな雰囲気が熟成 独立後1年で

 大和紡績は今期、中計2年目として「未来を見据えた持続的な企業価値の向上」「次世代の柱となる商品の創出」「世界のマーケットにチャレンジするグローバル企業への転換」を基本方針に、成長戦略の具体化と足場固めを進める。

 機能レーヨンでは、海外の有力競合メーカーの撤退や生産縮小を商機に捉え、欧米やアジアへ拡販し、海外売上比率の引き上げを目指す。生産拠点のインドネシアを軸に現地販路やグローバル展開を加速。そのため、日本から人材も増強している。

 投資では益田工場に数十億円規模を投じ、老朽設備の更新によって品質向上や生産の効率化を進める。生産能力は年間最大2万6千㌧で据え置くが、国内外でのレーヨンの競争力を高める。ただ、人手不足の影響で機械設備の搬入や設置が来期以降にずれ込む可能性がある。

 ダイワボウホールディングスから独立後1年が経過し、有地社長は「社員が前向きに頑張ろうという雰囲気が熟成されてきた」と話す。「開発、販売、工場が連携してサイクルを回し、企業価値の持続的な向上に全社一丸となって取り組む」として、連携強化と目標達成への意欲を示した。