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建築用ポリエステル断熱材/JIS化で浸透後押し/今夏にも初の認定工場

2025年05月22日 (木曜日)

 建築用ポリエステル断熱材で、国内で初めてとなる日本産業規格(JIS)認定工場が今夏にも誕生しそうだ。JIS化や、今年4月の省エネ法改正による新築住宅の断熱対応義務付けを追い風に拡販へつなげる。(長尾 昇)

 建築用ポリエステル断熱材には、低融点繊維を混合して熱で溶かして結合するサーマルボンド不織布が主に使われる。接着材不使用の熱融着のためノンホルムアルデヒドで安全性が高い。

 断熱性能はグラスウール同等以上で、透湿し湿気をため込まないため長期間劣化しにくく断熱性能が持続する。さらにペットボトルをリサイクルした再生ポリエステルを複合することで、焼却する場合と比べて二酸化炭素(CO2)を固定化でき、環境対応に優れる。施工もしやすい素材だ。

 住宅用ポリエステル断熱材の国内生産量は月産50トン弱で、国内の住宅用断熱材全体の1%ほどのシェアにとどまる。同60%程度を占めるグラスウールと比べると、コスト差もあり浸透しきれていないのが現状だ。信用度の向上にもつながるJIS化で浸透を後押ししたい考えだ。JISに対応することで、公共建設物などに採用されやすくなるメリットもある。

 JIS化は2022年。日本ポリエステル断熱材協会(堀之内新一郎会長)が4年ほどかけて実現にこぎ着けた。同協会加盟企業は帝人フロンティア、エンデバーハウス、ヒクマ、フコク、コスモプロジェクトの5社。東京大学名誉教授の坂本雄三氏が名誉顧問、近畿大学副学長の岩前篤氏が技術顧問に就いている。

 協会加盟企業の工場が今夏をめどにJIS認定を受ける予定で、JISマークの付いた製品が流通することになる。

 今年4月の省エネ法の改正による「断熱等級4」適合義務付けもプラス材料になる。

 これまでは断熱材が入っていなくても建築確認申請の許可が下りたが、今回の断熱性能の義務付けで、一定の断熱性が求められ1戸当たりの断熱材の使用量が増える流れにある。「フォローの風になっている」(米田賢一協会事務局長・エンデバーハウス社長)と捉える。

 今回の法改正で断熱材の厚みも増す傾向にある。しかし、そのことが頭を悩ます形にもなっている。加盟社の1社では、国交省の防火構造個別認定をポリエステル断熱材の製品ごとに取得しているが、製品ごとに試験などの費用が数百万円かかると言う。既存の認定製品よりも厚さが求められることで、再認定を取得する必要性が出てきているとする。1社ごとに対応することは負担が大きいため、同協会で防火認定を取得する形にできないか検討する。

 物流コストの上昇なども課題だが、ポリエステルの特徴を生かし、建築用断熱材としての可能性を追求する。