繊維ニュース

ユニチカ 技術を軸に素材展開

2025年05月26日 (月曜日)

 ユニチカの藤井実社長は、地域経済活性化支援機構の支援の下で実行中の事業再生計画の達成に全力を挙げると同時に、高分子事業と無機性素材事業、モノフィラメント事業ともに「技術を軸に素材展開する企業として新たな成長を目指す」との考えを強調した。

 事業再生計画では衣料繊維、不織布、一部を除く産業繊維から撤退し、フィルム・樹脂の高分子事業と活性炭繊維やガラス繊維など無機系素材事業、中空糸や釣り糸などモノフィラメント事業に経営資源を集中させることで財務体質の改善と高収益体質への転換を進める。

 2029年度(30年3月期)には売上高700億円、営業利益65億円を計画しており、計画の初年度となる25年度に関して藤井社長は「フィルムやガラス繊維・ガラスビーズはともに市況が回復基調。営業面では初年度として順調な滑り出し」と話す。

 高分子事業のフィルムは食品包装用途に強みがあり、引き続き中核事業と位置付ける。特に高ガスバリア性フィルムの拡販を進める。樹脂はナイロン6の特殊グレード品を重合から生産している点を強みとして生かす考え。変性ポリオレフィン樹脂も用途が拡大してきた。

 無機系素材事業はガラス繊維・ガラスビーズともに半導体関連用途を中心に拡大を狙う。活性炭繊維は、水質汚染物質として懸念が高まっている有機フッ素化合物(PFAS)を除去できる素材として水処理用途で注目が高まってきた。モノフィラメント事業はナイロン中空糸が中空糸膜用途で注目されている。分離膜や濃縮膜、除去フィルターなど用途開拓に取り組む。

 その上で「既存事業にプラスアルファとなる事業も作っていきたい」とし、「高分子の合成、重合、溶融、加工まで一貫して保有する技術をベースに素材展開する企業としての立ち位置を一段と明確にしたい考えだ。

 一方、撤退事業の譲渡に関しては、既に複数の案件で交渉が進められているもよう。藤井社長は「経済合理性は当然ながら、譲渡する事業の雇用維持と取引先への供給責任など継続性を重視して譲渡先を決めたい」と話す。