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東レ・大矢社長 収益最大化に力点

2025年05月27日 (火曜日)

 東レの大矢光雄社長、沓澤徹専務執行役員繊維事業本部長らは26日、東京都内で会見し、2025年度(26年3月期)が最終の中期経営課題の進展状況や次期中経の方向性を説明した。

 現中経は、事業利益が当初計画には届かないものの、3年連続で増益となるなど各施策の成果発現を見込む。次期中経では「成長戦略」と「構造改革」に同じ熱量で取り組むことで収益を最大化する。

 中経最終となる25年度の事業利益は、1500億円を予想している。中経の当初計画1800億円に対して300億円の未達となるが、自動車市場の回復鈍化や米国の関税政策などの影響で収益改善速度が緩やかになるとみる。関税は、事業利益を150億円押し下げると推測している。

 中経での施策は着実に実行し、戦略的プライシング・イノベーション創出では、製品価値に基づく高付加価値プライシングなどに取り組んだ結果、事業利益改善額は24、25年度の累計で300億円以上に達する見込み。特定事業・会社の構造改革(ダーウィンプロジェクト)でも24年度に約200億円の収益改善があった。

 26年度からの次期中経では、投資を選別し、事業拡大と収益性の向上を両立する。足元の成長戦略では設備投資の確実な効果発現と既存生産設備での利益極大化を進め、長期的視点では本質的な競争力と勝ちパターンを追求する。構造改革ではビジネスモデル検証・見直しを図る。

 勝ちパターンについて、大矢社長は「圧倒的な参入障壁と競合が追随困難な高付加価値を築き、長期にわたって価値を高め続ける唯一無二の価値創出モデル」と説明。炭素繊維複合材料事業での航空機メーカーとの取り組み、繊維事業におけるファーストリテイリングとの戦略的パートナーシップなどが例とした。

 その繊維事業は、24年度に売上収益が1兆 円を突破したが、沓澤専務執行役員は「通過点。収益率も高め、基幹事業としての位置付けを守る」と強調。長繊維織物とニットを軸にした生地・縫製品一貫ビジネスで持続的成長を目指す。エアバッグや人工皮革なども事業成長の原動力と位置付けている。

 ROIC(投下資本利益率)も重視する考えで、25年度は全社で5%(24年度実績4・4%)を見込む。繊維のROICは25年度9%(8・2%)を見込んでいるが、大矢社長は、長期的な姿を見据えた数字とした上で「繊維は2桁%、炭素繊維複合材料も2桁%(3・0%)を目指したい」とした。