特集 スクールユニフォーム(5)/探訪 学生服の現場から/伝統ある女子教育を実践/東京家政大学附属女子中学校・高等学校

2025年05月29日 (木曜日)

 創立144年の歴史を誇る東京家政大学附属女子中学校・高等学校(東京都板橋区)。建学の精神「自主自律」の実現を目標に、愛情、勤勉、聡明の三つの生活信条を掲げ、伝統に裏打ちされた女子教育を実践している。生徒の多様な個性を尊重し将来の選択肢を増やすための学校改革を推し進めるとともに、今年度から新たな制服を導入している。

〈新コース制スタート〉

 東京23区内にある学校キャンパスとしては、有数の広さを誇る同校。樹木2千本、200種以上の野草、約25種の野鳥が生息しているといわれ、豊かな自然に囲まれた落ち着いた学習環境が整っている。さらに東京家政大が同じ敷地内にあることから、大学と連携したプログラムや設備を活用できる点も特徴だ。

 現在、学校改革を積極的に進めており、中学は2024年から新たな教育プログラム「クリエイティブラーニング」を導入。将来の進路希望に応じて特進と進学の2クラスを設置し、それぞれ創造的な教科横断型体験学習を通して学ぶ意欲を育む。

 高校は25年度から、国公立や難関私立大への現役合格を目標とする「スーパーアドバンスト(SA)」コースと、難関・中堅私立大、東京家政大を目指す「クリエイティブラーニング(CL)」コースの2コース制を開始。多様な進路の実現に向け、カリキュラムも刷新している。

 グローバル教育では、英語4技能重視の授業や、資格取得、海外研修に注力する。海外プログラムには、ニュージーランド・マッセイ大への夏期語学研修、オーストラリア・ニュージーランドターム留学、カナダ長期留学などがある。

 また、キャリア教育の一環として「ヴァンサンカン・プラン」を実践。理想とする25歳に向けて、作文や学部・学科研究、ボランティア体験を通して学び進めていくプログラムを用意している。

 スポーツ活動においても実績を積み重ねている。24年度にはチアダンスの高校ドリルチーム部が全国大会1位となったほか、中学ドリルチーム部も全国大会出場。高校ソフトテニス部は関東大会出場、高校ソフトボール部は東京都ベスト8に進出している。

〈21年ぶりに制服刷新〉

 25年度から新制服へと切り替わった。高校新入生が80期生に当たることや、新コース制の導入といった節目であることに加え、21年間リニューアルを行っていなかったため、今の時代に合わせた多様性やデザイン性を取り入れたいとの要望が出ていたことがきっかけとなった。

 同校では従来から教職員によって運営する服装検討委員会があったが、今回のリニューアルに合わせ新たに制服リニューアルプロジェクトチームを23年5月に発足させた。一部重複しているメンバーもいるが、二つの組織が合同で検討していく方法を取った。調整役を務めたのは荒籾和成教頭だ。

 プロジェクトチームは、まず新制服に求めるコンセプトなどをまとめるため教職員などからアンケートを取った。結果を元に学生服メーカー3社によるコンペを実施し、トンボに製作を依頼することとした。その後、正装の冬服、盛夏服と、オプションの各アイテムを絞り込んでいった。正装の冬服は当初、スーツにするかブレザーにするかで意見が分かれたものの、最終的には従来と同様に濃紺3ピーススタイルとなった。素材は、しなやかな風合いとなるウール100%を採用し、6色の糸によって深みのある色合いを表現した。リボンの色とデザインも新しくしている。

 「併設大学には服飾系の学科を設置していることもあり、制服の品質にはこだわってきた」と荒籾教頭。盛夏服のセーラー服は人気のあるデザインだったため大きくは変えず、ジェンダーレスに対応したスラックスにワイドなデザインを採用した。

〈生徒も参加し柄を選定〉

 同校では、正装のほか、オプションのスカート、セーター、ニットベスト、Pコートなどがあり、これらアイテムについても検討委、プロジェクトチームが協力しながら順次決めていった。ただオプションスカートは2種のうち1種だけが最後までどうしても決まらずにいた。24年2月に全校生徒と教職員によるアンケートで圧倒的な得票だったネービーをベースにブルーラインを入れたタータンチェック柄の1点目はそのまま採用となったが、2点目は決め手に欠けたことで改めて検討し直すことになった。

 その後、生徒の思いをスカートに反映させるためには、デザインを生徒自身に任せたら良いのではないかという意見が出てきた。この考えを踏まえ、24年4月に中学生9人、高校生7人によるプロジェクトチームが立ち上がり、全体コーディネートを考えながら生徒たち自身が2点目のオプションスカートのデザイン選定に取り組んだ。試行錯誤の末、6月にはグレーをベースにネービーとイエローのラインを入れたタータンチェック柄のデザインが決定。8月には試作品を完成させ、秋の学校説明会での披露に間に合わせることができた。

 荒籾教頭は今回の制服リニューアルプロジェクトについて「さまざまな立場の意見を調整しながらの作業は困難だったが、伝統を大切にしながらも変化を感じられるデザインに仕上げることができた」と振り返る。