特集 スクールユニフォーム(7)/探訪 学生服の現場から/個性見いだすマイビジョン教育/浜松学院興誠中学校・高等学校

2025年05月29日 (木曜日)

 1933年の創立以来受け継ぐ教育理念「誠の精神」を掲げる浜松学院興誠中学校・高等学校(浜松市)。広く社会に貢献する「誠実」「堅実」「着実」を備える人材の育成を目指す。来るべき100周年に向けて4月に校名変更と制服リニューアルを実施し、新たな歴史を刻み始めている。

〈自身の将来像見つける〉

 静岡県西部地域に根付いた教育を展開する学校法人興誠学園は、同校のほか、大学、短期大学、幼稚園、こども園を運営。学園内の校種を越えた連携を密に行っており、科目履修や実習、文化祭などを通した生徒同士の交流も進めている。

 「マイビジョン教育」の実践は同校教育の特色の一つだ。生徒一人一人が「好き」や「得意」を見つけ深めていくことに重点を置くことで、卒業時に確かな将来を見つけ、羽ばたいていけるよう最大限のサポートを図っている。

 このうち高校は、国公立大や難関私立大合格を目標とする特進コース、4年制大学、専門学校、就職を目指すドリーム実現コース、保育者養成校に進学する子供教育コースの三つを設置。幅広い選択肢をラインアップすることで、さまざまな可能性を見いだすきっかけ作りに努める。

 スポーツ活動も盛んだ。昨年度には、全国高等学校選抜自転車競技大会や第71回東海高等学校総合体育大会バスケットボール競技に出場したほか、第77回静岡県高等学校バスケットボール選手権大会女子の部では5位入賞を果たしている。

 今春、エアコン完備の新体育館が完成した。アリーナと多目的ホールフロアには安全性と競技のしやすさを兼ね備える長尺弾性塩ビシートを採用。2階ギャラリーにはトレーニングスペースも設けている。

〈進化する学生服に対応〉

 今春入学した中学、高校生は14年ぶりとなる新制服を着用している。リニューアルのきっかけは、創立100周年に向けた記念事業としての役割と、前制服が現在の素材、機能の進化に対応できていないことだった。

 新制服導入に当たっては、2023年10月に高校の村松俊明副校長を代表に、男性の生徒指導部長、女性の総務課長と中学校主任をメンバーとする制服検討委員会を学内で立ち上げた。「男女それぞれの意見を取り入れるため男女半々の構成とした」と村松副校長。

 立ち上げ後、早々にメンバーと共に学生服メーカーを訪問。制服のカラーやデザイン、素材混率のトレンド、最新の機能などの説明を受け、「改めて今の制服の進化に感心した」と言う。

 検討委の開催数は24年12月に最終決定するまで20回以上に及んだ。途中、コンペなどを経て制服の製作を学生服メーカーの明石スクールユニフォームカンパニーに依頼することを決定。同社にも参加してもらい、さまざまなアイデアを加味しながら理想とする制服像に近付けていった。制服検討業務は初めてだったという村松副校長は「委員それぞれの好みや、管理職会議の思い、意見をまとめることが難しかった」と振り返る。

〈随所に独自性取り込む〉

 新制服の冬服は紺色を基調とした。中でも女子のスカートには、同校の行動指針でもある「誠実」をブルー、「堅実」をエンジ、「着実」をホワイトと三つのカラーで表現したオリジナルのチェック柄を採用。さらに村松副校長自身が採用したいと考えていた昼夜織り柄を取り入れた。光の反射によって柄が浮き出て見えるため趣深さが増す効果がある。

 オリジナルチェックはジャケットの襟元にもさりげなく施して統一感を醸し出した。胸の校章はインパクトが強くなりすぎないようワッペンではなく縫い付けにすることによってシックな印象を醸し出す。ボタンもオリジナル仕様だ。重視していた機能面ではウオッシャブルや防シワといったイージーケアが可能となった。ジェンダーレス対応でスラックスも導入している。

 夏服の上着は男女ともボトムアウトするデザイン。女子はグレーを基調にしたチェック柄スカートに、半袖または長袖ブラウス。デザイナーの意見によってサテン地のリボンを採用している。「当初は冬夏共用にするという案もあったが、年々暑さが厳しくなる中、涼し気な見た目も重要だと考えた」と村松副校長。

 今回の新制服導入は、さまざまな意見や要望に耳を傾けながら微に入り細にうがった検討を続けてきた結果、1年以上にわたる長丁場となった。それでも最終的に多くの人に納得してもらう制服が仕上がった。

 その背景には、身だしなみの重要性を説く村松副校長のリーダーシップと、トラディショナルファッションへの関心の高さも要因としてあるようだ。メーカー担当者が「ファッションに対してここまで豊富な知識を持っている先生は珍しい」と感心するほどだ。こだわり抜いて作り上げた新制服が4月から学園に新風を吹き込んでいる。