特集 スクールユニフォーム(8)/アパレル/制服の供給順調に/トンボ/菅公学生服/明石スクールユニフォームカンパニー/瀧本/オゴー産業
2025年05月29日 (木曜日)
性的少数者(LGBTQ)への配慮から、制服のブレザー化が進む中、学生服メーカー各社は今春も安定供給を最優先課題に位置付け、順調に納品を行った。一方で、大手メーカーを中心に在庫量が増加しており、今後はこちらの圧縮が課題となる。また、あらゆるコストが高騰する中、各社は制服の価格改定にも注力する。
〈トンボ/先行生産で供給順調/今後は在庫削減に注力〉
トンボは今春の入学商戦で、小ロット化の進行など生産の難易度が上がる中、計画的な先行生産によって順調に供給が行えた。モデルチェンジ校の獲得も学生服、体育着ともに順調だった。
先行生産に注力した一方、在庫が増加したことから、今後は在庫の削減を進める。藤原竜也社長は「備蓄生産を絞った上で、一昨年の期末在庫レベルにまで戻していきたい」と説明する。
価格改定交渉は順調に推移。新規物件の獲得や価格改定の効果などもあり、2025年6月期の売上高は「目標(460億円)に近いところまではいけそう」。一方で利益面は「コストアップに相殺され、目標には届かない」とする。
23年から稼働を始めた東京物流センター(茨城県笠間市)は、在庫金額がピーク時に前期の2・5倍になったほか、アソートや個人刺しゅう件数も増加。社員も13人から19人へ増員した。
昨年から稼働する紅陽台物流センター(岡山県玉野市)に隣接する昇華転写工場は、昇華転写プリンター13台、プレス機3台、自動裁断機(CAM)5台体制でフル稼働の状況が続いている。増産に伴う設備投資も検討する。
基幹システムのリニューアルも行う。自社内に専用システムを構築して運用する従来のオンプレミス型を取りつつ、システムの中身を刷新。27年の稼働を予定する。
〈菅公学生服/安定供給に努める/今期は増収、黒転見通し〉
菅公学生服は今春の入学商戦で、早めの材料手配や新規注文の締め切りの前倒しなどによって安定供給に努めた。黒田健介専務は「ここ2~3年で見ると一番スムーズに流れた」と語る。モデルチェンジ校の獲得は例年並みに推移した。
さまざまなコストが上昇する中、価格改定も順調に推移。この間、安定供給を重視して在庫を積み増したことから、今後は在庫を計画的に圧縮する。
2025年7月期は増収の見通し。同社は昨年、東京エリアの代理店業務を担っていた東京菅公学生服(東京都中央区)のほか、販売代理店の豊国商事(滋賀県長浜市)を子会社化している。利益面では、前期に2期連続の最終赤字となったが、今期は黒字転換を見込む。
設備投資では、米子工場(鳥取県米子市)の隣接地にブレザーやスラックスを生産する工場を増設する。7月半ばに着工し、来年7月の完成を予定する。倉敷工場(岡山県倉敷市)の生産本部の建屋の建て替えも進めており、こちらは来月末の完成予定。
環境配慮に向けた取り組みにも力を入れている。「制服・体操服の循環型プロジェクト(PJ)」をJEPLAN(川崎市)と協働して推進中で、56校と連携する。黒田専務は「身近なものをリユースしていくことは、子供たちにも良い効果が表れるのでは」と話す。
〈明石スクールユニフォームカンパニー/生産・納品は順調/リユース制服展開広げる〉
明石スクールユニフォームカンパニーは今春の入学商戦において、早期受注に加え、素材の手配なども計画立てて行えたことから、スムーズに生産、納品ができた。性的少数者(LGBTQ)への配慮によって制服のブレザー化が進む中、モデルチェンジ校の獲得も前年並みで推移した。
今期(2025年12月期)は引き続き新規校の獲得を進める。あらゆるコストが上がる中、価格改定も進めてきており、「今期は数字として明確に表れてくる」(河合秀文社長)。
今春から本格化させたメーカー認定リユース制服の展開にも注力。提携する学校で制服を回収し、クリーニング、修繕、検品、仕上げを行った後、販売するもので、既に複数校で取り組んでいる。柴田快三専務は「実績が出始めてきた」と話す。
設備投資にも着手。今後発生が懸念される南海トラフ地震などを想定し、本社の営業本部、管理本部、商品開発部などを隣接する7階建ての物流倉庫へ移転する。今月から改装工事に取り掛かっており、来シーズンの移転を計画する。
現本社は完成から65年ほどたつ。3棟の建物から構成されるが、正面玄関のある建物は解体し、残りの建物は耐震工事とリフォームを行った後、展示室などとして使う。
〈瀧本/「ヒュンメル」販売本格化/学校別ECサイト採用校増加〉
瀧本(大阪府東大阪市)は今春の入学商戦で、制服モデルチェンジ(MC)を前年並みの約70校確保した。スポーツ分野では、今春より本格販売を開始した「ヒュンメル」ブランドが約20校に採用され、順調な滑り出しを見せる。
来年の入学商戦に向けては、在庫の適正化を図りながら、同水準の70校のMCを維持する。商品の安定供給、新規顧客の獲得も目標に掲げる。
独自性のある商品提案にも力を入れる。
サービス面では、学校や制服販売店の物販業務効率化につながる学校別電子商取引(EC)サイト「ガクハンネット。」の採用数が80校超に拡大。デジタル採寸システムとの連携により、利便性を高め、新規顧客の開拓を図る。
商品面では、環境負荷の低減に貢献する「無水染色技術」を活用したポロシャツが熊本市の統一制服で初めて採用された。
さらに、日常時と非常時の両方で役立つデザインを取り入れた「フェーズフリー認証商品」の発信にも注力する。現在、ヒュンメルの体操服、ジャケット、エース(東京都渋谷区)と共同開発した防災頭巾になるタブレットケース付きリュックを展開しており、今後も製品ラインアップの拡充を図る。
〈オゴー産業/多面的な取り組みでファン作り/新規物件獲得を継続〉
オゴー産業(岡山県倉敷市)は今春の入学商戦で引き続き安定供給につなげた。一方で、ブレザーへのモデルチェンジが増える中、主力の詰め襟やセーラー服などの定番制服が減少傾向にある。減少分を「ブレザーで補えていない」(片山一昌取締役)とし、2024年12月期は微減収となった。
そのような中、今後も「物件獲得を継続していく」考え。同社の中でも、「新規物件の獲得では東京営業所が頑張っている」。校長会などで信頼を獲得するほか、23、24年と開く東京展では「アパレルメーカーとしての提案がファン作りにつながった」。
商品といったモノだけでなく、コトでの提案も長年続けてきた。その一つが道徳心の啓発や寄付を通じて世界の子供たちを支援する「セーブ・ザ・チルドレン」とのコラボレーションだ。コラボ制服に加え、セーブ・ザ・チルドレンの担当者を招いたセミナーを学校で開くなど、さまざまな観点から学校をサポートする。
片山取締役は「製品の素材や、安心安全に向けた取り組みなど、多面的な部分で当社を選んでもらえている」と話す。今後も主力の「鳩サクラ」など、自社ブランドを大事にしつつ、サービス面も磨きながら新規獲得を目指す。