特集 スクールユニフォーム(10)/素材メーカー/多角的な視点から業界支える/東洋紡せんい/東海サーモ/菅公学生服×岡山南高
2025年05月29日 (木曜日)
素材メーカーは、学生服メーカーの在庫調整の影響で受注が減少し、苦戦を強いられている。ただ、その間も手をこまぬいているわけではない。生産基盤の強化を図る一方で、環境配慮や機能性など多角的な視点から、より快適なスクールライフを支える素材の開発に取り組んでいる。
〈「得意ゾーン」に注力/独自の機能性と快適性で/東洋紡せんい〉
東洋紡せんいは来年の入学商戦に向けて、素材の主流がウール混からポリエステルへ移行する中、自社の強みが生きる「得意ゾーン」での提案に力を入れる。開発力を武器に、機能性と快適性を兼ね備えた独自素材の拡販を狙う。
現状の学販向け売り上げ構成比は、ニットが6割、織物が4割を占める。今年の入学商戦では高温傾向が続き、ニット系アイテムの販売が好調に推移した。ポロシャツや半袖シャツでは、紫外線遮蔽(しゃへい)や防透け性に優れた「レイブロック」や、吸水速乾性とストレッチ性を備えた「Zシャツ」の採用が拡大。ブレザー向けには、軽量でかさ高なダブルニット素材「エックスジャケット」が堅調な動きを見せた。
来年に向けて速乾性・ノーアイロン・耐久性に優れた「ToV(トーブ)シャツ」の販売を本格化。中東向け民族衣装用生地の技術から着想し開発したもので、すっきりした襟元や美しいシルエットによって正装感を持ったシャツになる。
高通気で防透け性が高い「サマークール涼夏」を進化させ、より通気性を高めた「サマークール風夏」といった素材や、ダブルフェースの丸編み地を使い洗濯後の乾きが早く毛玉ができにくい「NEOセーター」といった製品提案にも力を入れる。
一方で、価格競争が激化する体育着分野では、コスト対応型の体制構築が急務。台湾オフィスと連携し、現地サプライヤーとの生地共同開発を進める。従来の日本製生地+海外縫製から、海外製生地の活用も視野に入れる。
〈付加価値高めた芯地新提案/環境配慮と機能性を両立/東海サーモ〉
芯地・服飾資材製造卸の東海サーモ(岐阜県大垣市)は、「〝繊維〟と〝接着技術〟で、暮らしにイノベーション」を経営基本方針に定め、ライフスタイルの変化と向き合う。創業から66年間で培った知見を生かし、生活にイノベーションを起こす素材や製品を提供し続ける。
スクールユニフォーム分野では、長期間の着用や繰り返しの洗濯を想定し、耐久性の高い芯地を中心とした副資材を提供してきた。近年はそれらに加え、サステイナブルへの対応や機能性といった付加価値を追求した副資材の提案に力を注ぐ。
環境配慮型商材「サーモフィックス・ゼロ」から新たに打ち出す「V―spun」シリーズは、環境に優しい原料と製造方法を採用し、持続可能な選択肢を提供する。多機能性も兼ね備えており、軽量でありながら適度なハリ感を保持し、通気性、速乾性、抗菌防臭性にも優れている。さらに寸法安定性や摩擦耐久性などの機能性の向上も徹底して追求する。
V―spunは、特殊なポリエステル糸を使った平織りの芯地の製品群。ベルト、カーブベルト、襟、見返しなどの用途を想定し、シャツやパンツに適した芯地として提案する。
エコテックス規格対応を前面に出し、PFAS(有機フッ素化合物)やホルムアルデヒド含有加工剤を使わず、無溶剤コーティング剤を使用している。
同社は今後も「芯地は、もっとできる」の具現化を目指し、安心・安全でありながら特徴ある商品を供給していく。
〈菅公学生服×岡山南高/宇宙産業スタッフ制服を企画/デザインと機能性こだわる〉
「岡山南高校服飾デザイン科産学連携実学体験プロジェクト」(MPS)を推進する菅公学生服と岡山県立岡山南高等学校(岡山市)は2024年度、「未来の航空宇宙産業を担う新スタッフユニフォーム」の企画に挑戦した。
MPSは14年に発足し、県内中学校の体操服や制服、同校の夏服の企画に取り組むなど、産学協同でキャリア教育を推進している。
航空・宇宙分野の先端技術の活用による産業集積で地域の仕事創出を目指す、一般社団法人MASC(マスク、岡山県倉敷市)からの依頼を受けて企画を始めた。服飾デザイン科2年生38人が菅公学生服、同社グループの企業ユニフォーム製造卸、シーユーピー(岡山市)、キャリア教育事業などを行うカンコーマナボネクト(同)と連携して取り組んだ。
最終的に八つの企画の中から1企画、「ストレスフリーな宇宙」が選ばれた。ファスナーを開けるとオープンカラー、閉めるとスタンドカラーになるデザイン。袖は季節に合わせて取り外せる。さまざまなポケットで収納性を高めたとともに、面ファスナーでワッペンを取り付けられる機能など、利便性にもこだわった。
宇宙をイメージする黒色をメインに、地球の緑や水を想起させるターコイズ色をサブカラーとして採用した。
服飾デザイン科2年生の桶田陸斗さんは「個性と要求を5割5割で仕上げるのは非常に難しかったが、1割でも2割でも私たちの個性を入れることができる隙間を探して見つけるようにした」と話した。
ユニフォームは、6月にフランス・パリで開かれるパリ航空ショーで披露する。