繊維ニュース

東レ、帝人など5社 試される変化への即応力

2025年05月30日 (金曜日)

 東レや帝人など繊維関連企業5社は、2025年度に中期経営課題・中期経営計画の最終年度を迎える。米国の関税動向など先行きの不透明感が強まる中、変化への即応力が一層問われそうだ。

 東レは3カ年の中経最終となる25年度の事業利益で、当初計画に対して未達を予想するが、自動車市場の回復鈍化や米国の関税政策などの影響で収益改善速度が緩やかになるとみる。関税は、事業利益を150億円押し下げると推測している。

 繊維事業では24年度に売上収益が1兆円を初めて超え、事業利益が同社のセグメント中で最も利益を生んだ。スポーツ・アパレル用途の需要回復が背景にある。今期(26年3月期)は米国の関税動向を注視しながら、ROIC(投下資本利益率)改善と高機能繊維のプレミア維持、多品種・小ロット生産対応の最適化が課題となる。

 帝人は、2カ年の中計で、「収益性改善の完遂による基礎収益力の回復」「事業ポートフォリオ変革」に取り組み、複合成形材料で北米事業の売却といった施策を講じた。25年度もスピード感をもって事業の収益力改善を図り、成長戦略を具現化していくことでROE(自己資本利益率)10%以上を目指す。

 グループ中核の帝人フロンティアを含む繊維・製品セグメントでは、衣料用途と並行して産業資材用途を強化し、両輪で事業を進める。今期は前年並みを想定するが、脱・汎用(はんよう)路線と環境対応素材の拡充により、付加価値型素材メーカー系商社への転換を図る。

 ワコールホールディングス(HD)は3カ年の当初計画と比べて、売上収益や事業利益の目標を下方修正した。一方で、ROEは6%から7%に引き上げ、資本効率の改善を重視する。価格の二極化が加速する中、その対応を強化。電子商取引(EC)やコンディショニングウエア「CW―X」の展開に力を入れながら、今年度業績は前年度からのV字回復を狙う。

 マツオカコーポレーションは、これまでに整備してきた顧客ニーズに柔軟に対応できる生産背景の強みが発揮され、3カ年の中計で掲げていた売上高700億円の目標を前倒しで達成。中計の売上高、経常利益目標とも上方修正した。今期はベトナム、バングラデシュの工場を中心に生産キャパシティーを拡大。併せて、システム投資にも着手しながら、スマートファクトリー化を目指す。

 5カ年の中計の最終年度を迎える富士紡HDは、研磨材など非繊維事業が全体をけん引する中、繊維関連の生活衣料事業では収益貢献度をどう高めるかが課題。今期も減益を予想する中、主力のインナー販売でのEC比率の向上や、高付加価値商品の開発、輸出拡大に取り組む。