東レ 「成長」「改革」を両立

2025年05月30日 (金曜日)

 東レの大矢光雄社長は29日に大阪で会見し、2024年度(25年3月期)の繊維事業の売上収益が1兆円を超えたことに関して「あくまで通過点。引き続き基幹事業として成長戦略と構造改革を両立する」との考えを強調した。

 特に構造改革の対象とするポリエステル綿混織物事業は生産規模の適正化と高付加価値化を進める。

 繊維事業は24年度に売上収益が1兆円を超えたことに加えて、ROIC(投下資本利益率)も8・2%となった。25年度にはこれを9%まで高める計画だ。大矢社長は26年度からの次期中期経営課題でも「繊維事業は基幹事業と位置付ける」とし、収益拡大とROIC向上に取り組む。会見に同席した沓澤徹専務執行役員繊維事業本部長は、繊維事業の今後の成長領域と位置付けるエアバッグ、人工皮革、縫製一貫型製品に加えて「エアバッグや人工皮革以外の産業資材分野も成長の可能性がある」と指摘する。

 また、衣料繊維も含めてこれまで中国や東南アジアを中心にサプライチェーンを広げることで業容を拡大してきたが、今後はこれをインド市場などにまで広げることを検討する。また、大矢社長は「サプライチェーンの出口を大手取引先との“共創”によって作ってきた」とし、こうした戦略を今後も強化することで繊維事業の規模拡大と利益率向上を同時に追求する考えだ。

 一方、構造改革に関しては「特定事業・会社の構造改革」(ダーウィンプロジェクト)の対象となっているポリエステル短繊維とPPSBに加えて、東南アジア子会社を中心としたポリエステル綿混織物事業の収益改善に取り組む。現在、マレーシア、インドネシア、タイに生産拠点を持つが、縮小を含めた生産規模適正化を進めると同時に、従来の主力用途であったシャツ地以外の用途や販路、販売形態を開拓することで安定収益事業への転換を目指す。

 ダーウィンプロジェクトの対象となっているPPSB事業に関しては、韓国と中国での生産規模を縮小しながら25年度上半期での黒字化を計画する。今後も成長が期待されるインドネシア市場やインド市場への取り組みによってはPPSB事業を再び高成長・高収益事業へと転換できる可能性があるとの考えを示した。