特集 快適・衛生の繊維(2)/快適・衛生で安心な生活を支える 素材・加工・製品
2025年05月30日 (金曜日)
〈大和紡績/天然由来/SEKを両軸に開拓/日常生活全般へ提案〉
大和紡績は、天然由来成分による後加工と、SEKマーク認証の高機能加工を両軸に、清潔・衛生分野での素材提案を強化している。衣料品にとどまらず、寝装品やインテリアまで幅広く提案できる。
天然系加工では、抗菌防臭の「シトラスガード」、保湿性の「アミノモイスト」、pHコントロール機能を持つ「アミノピュア」などを展開。いずれも化粧品原料にも使われる植物由来成分で、安全性と環境配慮を訴求する。「ハーブトリート」はアロエとキトサンを使い、抗菌防臭性を高めた加工で受注を伸ばしている。
一方、SEKマーク認証を取得した高機能素材では、抗菌防臭の「ミラクルセット」、制菌加工の「クリアフレッシュ」、抗ウイルス対応の「クリアフレッシュVO」などを展開。インナーやパジャマ、寝装品での採用が広がる。「ハルゼッケアルファ」は防ダニ加工とエコマークの両立で、ふとん中わた向けに安定した引き合いを得ている。
さらに、綿100%でありながら合繊並みの速乾性とソフトな風合いを持つ生地「プレミア」も開発。従来品「ミラクルドライ」より柔らかく、プレミアムな質感で好評を得ている。安全性と快適性、環境対応を兼ね備えた清潔・衛生素材の開発を通じて、日常生活全般への提案力を高める。
〈睡眠用シャツに採用/機能と快適性両立/レンチング〉
レンチングの再生セルロース繊維「テンセル」がリカバリーウエア用途でも注目が高まっている。機能性素材とテンセルを組み合わせることで、機能と快適性を両立することができるためだ。
このほど、医療機器認証も受けている磁力による健康ギア「コラントッテ」を展開するコラントッテ(大阪市中央区)の睡眠用シャツにHWMレーヨン「テンセル」モダールが採用された。磁力パーツによって血行促進効果が見込めると同時に、テンセルモダールによって着用時の快適性を高めた。
近年、磁力や遠赤外線による血行促進効果を応用したリカバリーウエアへの注目が高まる。こうした用途では機能性だけでなく快適性も高めるためにテンセルを採用するケースが増えてきた。
また、紫外線カット機能を持つ酸化チタン練り込みタイプの「テンセルSUN」も引き合いが増えている。需要が高まる夏用素材としてテンセルへの注目が高まっており、モリリンがテンセルモダールと再生ポリエステルの混紡糸「ソマルティ」を打ち出す。接触冷感や紫外線カットのほか、透けにくいのも特徴。日本だけでなく中東市場でも引き合いが増えるなど注目が高い。
〈広がる経血対応消臭加工/女性の健康課題解決へ/シキボウ〉
シキボウは、女性特有の健康課題の解決を目指し、フェムテック対応素材の拡販に取り組んでいる。中でも、汗臭に加え、経血に含まれる臭気成分も吸着・中和できる消臭加工素材「フェミュー」が広がりを見せている。
フェミューは、アンモニアやイソ吉草酸、トリメチルアミン、ジメチルジスルフィドなど、計8種の臭気成分に対して吸着・中和効果を発揮。オーバーパンツなどへの採用実績も積み上がっている。
女性の労働力人口が増加する中、ワーキングや介護・メディカルといったユニフォーム分野でも、インナーやパンツとしての採用が拡大傾向にある。長時間勤務や不規則な働き方が多い女性にとって、フェミューの加工製品は心強い味方となっている。
また、同社の消臭加工素材「スーパーアニエール」シリーズは、体臭やエイジングケアへの関心の高まりを背景に、時代ごとの“におい”の悩みに対応しながらロングセラーとして進化。加えて、業務用臭気対策剤「デオマジック」は、産業廃棄物処理業者を中心に中国やベトナム、タイなど海外にも販路を広げている。
快適性の面では、夏の長期化を受け、高通気素材「アゼック」への関心が再び高まっている。強撚糸を用いて接触冷感性を高めることで、より快適性を追求。独自の加工技術と生地の組み合わせにより、快適・衛生のニーズに応える素材提案を充実させる。
〈靴下のハラダ/機能軸に新たな成長を/冷感、消臭・抗ウイルス〉
靴下製造卸のハラダ(奈良県桜井市)は機能商品の提案を強める。主力は最新の流行に合わせたレディースソックス。SNSで強い影響力を持つインフルエンサーと組んだ商品プロモーションで急成長を遂げた。
これから機能を軸とする商品開発と販売に力を入れ、新たな収益の柱に育てる。昨年から夏の酷暑に対応した接触冷感機能ソックスの販売をスタート。同社の接触冷感機能糸を使った商品は、一般的な同機能の商品と比べ2倍近い効能が検査機関で確認されており、この性能を強みに支持を広げる。今年からソックスに加えレギンス、ネックカバーも投入し、3月から好調に売れていると言う。
独自の消臭・抗ウイルス加工「デオゼロ」を施した靴下は、新型コロナウイルス禍が始まった2020年に大ヒットした商品だ。ウイルス対策用品への消費者の意識が高まったことが追い風となり爆発的に売れた。
最近では、感染症対策への市場の関心が薄らいだこともあり、同加工によって得られる消臭機能をメインにアピールしている。別注で生産する帽子、ナイロンアームカバー、学校ごとに別注で生産する靴下への加工で底堅い動きが続く。
〈健康グッズ向け好調続く/展開用途を広げる/サンワード商会〉
サンワード商会(大阪市中央区)のハイブリッド触媒「ティオ・ティオ プレミアム」は、展開用途を広げながら販売量を維持している。足元では健康グッズ用途が引き続き好調で、マスクなど新型コロナウイルス特需がなくなった分をカバーしている。健康グッズ用は大ロットへの対応が求められるが、コロナ禍時の生産能力増強が奏功していると言う。
そのほかの用途では紳士服や学生服が微減で推移するが、オフィスなどユニフォーム用途は引き続き堅調で、フィルターも安定している。今後に向けては旅行グッズでの拡大も見込む。光がなくても性能を発揮するティオ・ティオ プレミアムの消臭などの機能を活用し、旅行かばんなどさまざまなアイテムで開発が進んでいる。
資材用途では、車輌用途なども堅調で、吹付施工を含めて展開が広がっている。フィルターなど農林畜産関連での開発にも取り組んでいる。
ティオ・ティオ プレミアムは大阪大学産業科学研究所と共同開発したハイブリッド触媒で、抗菌、消臭、抗ウイルス、帯電防止などの機能を持つ。近年は酷暑対策など他の機能を加えた新タイプも拡充しており、新商品ではカビやバイオフィルム対策の機能を加えたタイプも開発中。ストレス臭に対する消臭効果の試験も進めている。