特集 快適・衛生の繊維(3)/快適・衛生の素材・加工・製品を裏付ける試験機関/カケン/ボーケン/QTEC/大和化学工業・評価技術センター
2025年05月30日 (金曜日)
〈カケン/“生き物係”の生物ラボ/ウイルスや菌、花粉に〉
カケンテストセンター(カケン)の大阪事業所生物ラボは、カケンにおける“生き物係”的な存在だ。ウイルスから菌、カビ、ダニ、花粉、蚊までさまざまな生物に関連する試験に対応し、現在の規格に当てはまらないような試験にも可能な限り応じるとしている。
その生物ラボは今年2月、「特定タンパク質低減性試験」(ISO4333)の受託を開始した。花粉やダニのふん・死骸に由来するタンパク質(特定タンパク質)を低減する度合いを測定する。スギ花粉由来、コナヒョウヒダニの排せつ物・虫体由来のタンパク質を対象とする。
繊維製品の中には、これらの特定タンパク質を低減させる機能を付与した製品があり、そうした機能を評価できる。対象となる製品は衣料品や寝装品、カーテンをはじめとするインテリア関連など。受託開始後は問い合わせも多く、今後の本格化に期待をかける。
今月20日付けで発行された「JIS S 3303」にも対応する。ウエットワイパー類の除菌性能を評価する試験であり、黄色ブドウ球菌と大腸菌が対象菌種となっている。新型コロナウイルス禍以降、試験依頼はコンスタントにあったが、今回のJIS化によってさらに依頼は増えると予想している。
〈ボーケン/素材から製品まで評価/多様な人体生理測定可能〉
ボーケン品質評価機構(ボーケン)は、快適性や衛生に焦点を当てた機能素材・製品に対して、素材から製品まで一貫で性能評価できる体制を構築している。ユニチカガーメンテック(UGT)との提携によって人体生理測定まで含めた高度な評価が強みだ。
快適性の測定には、着用時の人体生理上の変化を読み取る方法を積極的に導入。例えば機能性衣料の着用試験で、人間が不快を感じる際に唾液に含まれる酵素であるアミラーゼの濃度が変化することを利用した評価方法などを導入した。体温、脳波、血流、筋電図、着圧、心拍、衣服内温度、湿度など多様な人体生理測定も可能だ。
猛暑対策機能性の評価にも力を入れる。持続冷感性試験を実用化した。吸水吸熱・気化冷却性の試験では、UGTで肌離れ性の評価も行うことで気化冷却性とべたつき防止という相反する機能を評価できる。遮熱性試験でもベビーカーや傘の実物を使用した試験や、衣料品もサーマルマネキンによる実用に近い性能評価ができる。
繊維評価技術協議会が新設した「特定タンパク質低減加工SEKマーク」の指定試験機関として認証試験も始まった。エビデンスとなる試験に加えて、表示に関する助言などサポートにも力を入れる。
〈QTEC/試験精度の向上に注力/個ではなく組織の技術に〉
日本繊維製品品質技術センター(QTEC)の西日本事業所神戸試験センターは、微生物関連試験を中心に幅広い対応を強みとしている。試験技術や精度の向上に力を入れると同時に、顧客の細かな要望にも応える。こうした取り組みを深化し、多くの顧客に信頼される検査機関を目指す。
新型コロナウイルス感染症が第5類に移行し、抗ウイルス試験や抗菌試験の依頼は一時と比べると落着きを見せる。「コロナ禍では休むことなく走り続けてきた」とし、少し余裕ができた今、「基礎的な技術も含めて改めて足固めを強化したい」考えを示す。
微生物試験や電界放出形走査電子顕微鏡によるウイルスなどの可視化業務では、アナログ的な部分も残り、職人的な技が求められる。一人一人の技術向上が不可欠だが、全体のレベル向上を図り、「個の技術ではなく、組織としての技術とする」と強調する。
その一環として学会などにも参加。今年9月に三重県で開催される「日本防菌防黴学会」での発表を予定している。
試験・検査業務では、壁紙やインテリアなど、衣料品以外にも力を入れるほか、対応可能なウイルスや菌の拡充にも目を向ける。納期短縮などのサービス面にも磨きをかける。
〈大和化学工業・評価技術センター/顧客のモノ作り支援/ワンチームで取り組む〉
公的試験機関の大和化学工業・評価技術センター(大阪市東淀川区)は、検査機関として試験や評価を通じて、顧客とワンチームとなってモノ作りに取り組むことをコンセプトに掲げている。
試験方法や結果に関する相談に顧客目線で対応することで顧客の製品開発をサポート。さらに、顧客の目的に応じたオリジナルの評価方法の提案や、予算に合わせた評価のカスタマイズも可能だ。
同センターは大和化学工業の繊維加工剤事業とは人員、設備とも分け、完全に独立して運営されている。試験内容は、抗菌や抗ウイルス、防カビ、除菌、防虫、消臭、防炎など。SEK(繊維評価技術協議会)の抗菌や制菌、抗ウイルスマーク、さらに4月に始まった特定タンパク質低減加工マークの指定検査機関としても対応する。
SEKのほか、JISに基づく証明書発行、SIAA(抗菌製品技術協議会)の抗菌、防カビ、抗ウイルス加工マーク、JHPIA(日本衛生材料工業連合会)の除菌、抗菌マークなどにも対応する。
試験内容も拡充している。今年からは細菌の中で増殖するウイルスであるバクテリオファージの試験をスタート。さらに、防虫試験では、カメムシ忌避試験の取り扱いも開始している。