ごえんぼう

2025年06月02日 (月曜日)

 先日、奈良国立博物館で開催中の「超国宝―祈りのかがやき―」展を訪れた。「七支刀」など、教科書で見た国宝の数々に圧倒された▼国宝には海外からの伝来品もあるが、国内で制作されたものも多い。以前にも書いたが、唐古・鍵遺跡のミュージアムで見た「どう開けたのか不明な縫い針の穴」のように、日本人は古くから驚くほどの器用さを備えていたようだ▼中でも「刺繍釈迦如来説法図」は象徴的な存在だ。唐からの伝来説もあるが、法隆寺金堂壁画との共通点から国内制作との見方も根強い。絵画をもしのぐ立体感と神聖さを、緻密な刺しゅうで表現する姿勢に、日本的なモノ作り精神を感じる▼再現が難しい独自の刺しゅう技法も確認されており、今では「ロストテクノロジー」となっている。繊維業界では近年、事業の撤退や縮小が相次ぎ、技術も静かに失われつつある。この10年でどれだけ消えてしまったのだろうか。