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綿紡績大手・繊維事業 持続的な成長で好循環へ

2025年06月02日 (月曜日)

 綿紡績大手の繊維事業における2025年度は、持続的な成長に向けた構造改革を進めるとともに、海外での事業拡大や独自性の高い製品の販売比率向上に取り組む。

 共通するキーワードは「高付加価値化」「海外展開」「サステイナビリティー」。これらの取り組みを通じ、成長の好循環を目指す。

 3カ年の中期経営計画をスタートさせたクラボウの今期は大幅な減収、営業損失を計画する。カジュアル衣料向けなど一部製品の市場環境が依然として厳しいことに加え、不採算ビジネスの縮小を進める。さらに、安城工場(愛知県安城市)の閉鎖に伴う費用など、構造改革に伴う一時的なコストも想定されている。

 一時的な減収となるが、「高付加価値製品とグローバル生産体制という、27年度に向けた成長の基盤を固める年となる」として、将来的な収益拡大に向けた土台作りを進める。

 前期に7期ぶりの黒字化を果たしたシキボウは、「稼ぐ力の向上」を柱とする3カ年の新中計を始動。中東民族衣装向けの生地輸出では「日本製品への引き合いが依然として強く、受注も安定している」として堅調。在庫調整が解消されてきたユニフォーム地では高通気性素材「アゼック」を中心に販売を伸ばす。「サステ素材拡販」「外・外ビジネス強化」「中東での拡販」を重点施策に掲げ、成長軌道を描く。

 日東紡の資材・ケミカル事業のうち、繊維関連では、環境対応の副資材のニーズが高まってくると予想し、ポリ乳酸(PLA)の生分解性芯地やマイクロプラスチックに対応する海洋生分解の芯地の提案に力を入れる。モノマテリアルが可能な商品、ドット状コーティングによる機能加工技術にも注力。日東紡アドバンテックスでは増収増益を計画する。

 富士紡ホールディングス(HD)の生活衣料事業では、繊維素材の事業の一部を休止し、経営資源を研磨材にシフトし選択と集中を図る。一方、インナーの「BVD」など繊維製品は電子商取引(EC)やSNSを通じた認知度の向上で販売力の強化を図るとともに、「アングル」では堅調な海外向けをさらに伸ばす。

 前期に中計初年度として好発進した大和紡績は、機能レーヨンなどグローバル展開を加速し、海外売上比率を前期の15・4%から20・8%へと引き上げる。益田工場(島根県益田市)に数十億円規模の設備投資を見据え、品質向上と生産効率の改善に注力する。「開発、販売、工場が連携してサイクルを回し、企業価値の持続的な向上に全社一丸で取り組む」として、売上高、利益とも前期を上回る計画を掲げる。

 日清紡HDでは、ブラジル事業の黒字化が全体の収益を支える柱となっている。渦流精紡糸の展開が順調で、高い技術力が現地で高く評価されている。今後はインドネシアの生産拠点を軸に市場を捉え、繊維事業の再構築を急ぐ。