この人に聞く/ロイネ 代表取締役社長 橋本 徳也 氏/海外生産の新展開を模索

2025年06月03日 (火曜日)

 総合アパレル製造卸のロイネ(東京都品川区)は、伊藤忠商事繊維カンパニーの事業会社の中核的な役割を担う。2026年1月に創業110周年を迎える老舗でもあり、時代の変化に合わせアパレル事業の進化を図ってきた。橋本徳也社長に事業の現状や今後の展望を聞いた。

  ――現在の事業環境は。

 現時点では米トランプ政権の関税政策などの直接的な影響は見られませんが、先行きには懸念を抱いています。

 生産の大半を海外が占め、売り上げの95%は輸入である当社にとって、為替リスクへの備えは喫緊の課題です。

 中国やASEANといった生産地で、米国向けの製品を手掛けていた工場が、空いたスペースを埋めるため〝安売り〟に走ると、相場が急激に下落する事態も起こり得ます。今後の推移を注視する必要があります。

  ――事業の現状は。

 24年度(25年3月期)は増収増益でした。売り上げのほぼ半分を占めるインナーの業績が、年間を通じ安定的に推移しました。夏季の長期化により、インナーをはじめ夏物が売れる時期が延びたことが要因と捉えています。

 その影響はシャツにも強く表れ、ニットシャツやビズポロといった新しいカテゴリーの商材が伸びています。

 近年注力してきた織物の生産・販売事業も、形になってきたという手応えがあります。

  ――国内外の生産体制について。

 国内では島根県にニットの工場、兵庫県に織物の工場と2カ所の生産拠点を擁しています。いずれもスポーツ関連の受注でキャパが埋まっており、増産対応か高付加価値化かと今後の方向性を検討する段階に来ています。

 海外では、ベトナムとカンボジアの生産拠点の業績が安定しています。しかし、今後は人手不足の問題が顕在化すると予想されるため、自動化に踏み出すかの判断が迫られています。インドネシアなど周辺国への生産地拡大についても、方針を決めなければなりません。

  ――人材強化の施策について。

 最重要の経営課題に位置付けています。例えば、シニア人材の待遇を一律に下げるのではなく、貢献度や期待度に応じて設定する仕組みを取り入れます。

 今期から、専門性が高い業務を担う人材が、昇進にとらわれず各自のキャリアコースを進める制度を導入しています。人事制度に柔軟性を持たせ、多様な人材が存分に力を発揮できる組織を目指します。