合繊メーカー2025年度見通し/市況の回復見込むも関税影響織り込めず
2025年06月04日 (水曜日)
合繊メーカーの繊維事業の2025年度(26年3月期)業績予想は、繊維関連セグメントの多くが増益となるなど比較的底堅い見通しで、衣料用途、産業用途ともに引き続き市況の回復を見込む。米国の関税政策の影響に関しては十分に織り込むことができず、依然として大きな不確定要素として先行きに影を落とす。(宇治光洋)
24年度に繊維売上収益が1兆円を超えた東レは、25年度も繊維セグメントで増収・大幅増益を見込む。衣料用途が堅調に推移し、産業用途も自動車関連の需要回復を見込む。戦略的プライシングや不採算・低収益事業の構造改革の効果も引き続き収益に寄与する見通しだ。
帝人の繊維・製品セグメントも増益予想。こちらも産業用途は自動車関連の増販を見込み、衣料用途も堅調を維持するとする。マテリアルセグメントはアラミド繊維と炭素繊維のコスト構造改革と、複合成形材料の北米事業の譲渡などで事業利益が大幅に増加する見通しだ。
東洋紡の環境・機能材セグメントは、不織布マテリアル事業で国内生産体制見直しなどで黒字化にめどを付け、中核事業会社である東洋紡エムシーの成長戦略を実行することで増益を見込む。機能繊維・商事セグメントもエアバッグ基布事業の収益改善策を実行し、衣料繊維も一段の資産効率向上で営業利益を倍増させる。
一方、旭化成のマテリアル事業は減収減益計画。うち繊維関連を含むカーインテリア事業とコンフォートライフ事業もともに減益計画。カーインテリアは販売量こそ増加を見込むが、円高の影響や原材料価格上昇と販管費増加が収益を押し下げる。コンフォートライフも円高影響に加え工場の新規稼働や定期修繕による固定費増加で減益計画となる。
総じて堅調な見通しとなるが、やはり不確定要素となるのが米国の関税政策の動向と影響だ。東レは米国関税措置による影響として売上収益400億円、事業利益150億円の減少をそれぞれ織り込んだが、そのほかの各社は基本的に影響を織り込めていない。
このため米国の政策動向によっては、業績見通しも大きく変化する可能性がある。しばらくは期待感と不安感が入り混じる中での事業運営が続くことになりそうだ。