異業種に見る環境対応/繊維にも目を向ける/業界で知られた技術も

2025年06月05日 (木曜日)

 地球環境への対応は、全ての産業や業種に共通の課題と言える。扱うモノはそれぞれの領域で異なるが、リサイクルや有害物質除去といった視点に大きな違いはない。さまざまな取り組みが進められる中、繊維に関連する分野での環境対応に目を向ける他産業の企業が出てきた。そこには繊維業界で知られた技術が用いられている。(桃井直人)

 東京都台東区に本社を置くASPiA JAPANは先月、油吸着材で国土交通省の「型式承認」を取得した。自社製品で展開しているマットとロープで取得し、「商品の信頼度向上につながる。海洋や船舶用途に本格進出する足掛かりにしたい」と話した。

 同社は、油ろ過機などの厨房設備の販売を主力としている。業務用厨房に義務付けられているグリストラップ(油脂分離阻集器)の清掃を目的にナノファイバーを使った油吸着材の展開を開始。事業拡大の一環として海洋や船舶などへの参入を図っている。

 同社の油吸着材はポリプロピレン製で、メルトブロー法を応用したナノファイバー技術を採用している。縦横325㍉のマットで約1㌔の油を、ロープは1㍍(幅20㌢)で20㌔の油を吸着するなど、高い性能を誇る。以前は国内で生産していたが、現在はベトナムの工場に生産を委託している。

 特殊鋼材などを販売するサハシ特殊鋼(名古屋市港区)は、使用済み紙おむつのマテリアルリサイクルの事業化に取り組んでいる。独自に開発した装置を用い、使用済み紙おむつを乾燥・粉砕。乾燥物を樹脂と複合してペレットを作り、プラスチック製品に再生する。

 乾燥時などで発生する臭いを抑える目的で利用するのが、シキボウが販売する「デオマジック」だ。香水のメカニズムを応用した消臭技術で、不快な臭いに香り成分を組み合わせて「良い香り」に変化させる。今回のリサイクルに欠かせない役割を果たしている。

 紙おむつから再生したペレットでプラスチック製品(医療廃棄物回収箱)を試作した日輝通商(神戸市)は「10~20%の含有率であれば成形できることが分かった」とした。事業化には課題が残るが、サハシ特殊鋼は「3年後ぐらいに事業化」との見通しを示した。

 流体機器装置の設計を行う流機エンジニアリング(東京都港区)は、PFAS(有機フッ素化合物)浄化装置を展開する。プリーツフィルターと粉体(粉末活性炭)の組み合わせで機能の向上を図っているが、粉体にソニーの「トリポーラス」を活用する。

 トリポーラスは、もみ殻などの余剰バイオマス(再生可能な生物由来有機性資源)から生まれた多孔質炭素材料。同材料を使った試験は、岐阜県各務原市のオープンイノベーションで実施した。通常の活性炭と比べて良好な結果を得たが、コスト面などで壁がある。

 異業種による地球環境負荷低減の取り組みに、繊維業界でなじみのある技術や素材が使われているのは興味深い。産業や業種を超えた連携の新たな形が示された格好だ。