紡協 リサイクル綿糸をJIS化へ
2025年06月06日 (金曜日)
日本紡績協会(紡協)は4日、大阪市内で定期総会を開き、会長に大和紡績の有地邦彦社長、副会長に日東紡の多田弘行社長を選任した。環境意識の高まりと循環経済への対応を背景に、今年度末までに「リサイクルコットン紡績糸」の日本産業規格(JIS)化を目指す方針を示した。
欧州連合(EU)では「持続可能な循環型繊維戦略」が進む中、日本でも「環境配慮設計ガイドライン」が整備され、サプライチェーン全体での環境対応が求められている。こうした中、リサイクル繊維の需要は今後拡大が見込まれるが、その品質や含有率の証明が大きな課題とされている。
紡協では2年前に分科会を設置し、反毛、未利用綿、再生セルロースを対象とした紡績糸のJIS化に向けた取り組みをスタート。ボーケン品質評価機構(ボーケン)と連携し、原案を策定してきた。
しかし、リサイクル原料とバージン原料との識別が難しいという技術的課題もあり、識別技術の確立には至っていない。このため「自己申告型」に切り替え、製造元からの申告情報を基に信頼性を確保する「自己適合宣言」で対応する方向で規格の成立を進めている。
JISの原案は完成しており、今年度内の正式な成立を目指し、精度の向上を図っている。これにより、リサイクルコットン紡績糸の品質証明が明確となり、国内流通や製品表示の信頼性向上が期待される。将来的には国際標準化機構(ISO)での標準化も視野に入れる。
有地会長は、JIS化を含む協会の今後の活動について、「業界共通の課題解決に取り組むと同時に、各社の事業運営に役立つ情報発信にも注力する」と説明した。国内紡績業界の構造変化により、会員企業の減少が懸念される中、協会運営の持続性確保や会員資格規約の見直しにも言及。事業の多様化が進む現状を踏まえ、各社の実情に即した支援の必要性を指摘し、「会員企業とともに変化に対応し、ともに発展していきたい」と抱負を語った。