特集 インテリア総合(2)/建築用ポリエステル断熱材/今夏にも初のJIS認定工場/環境対応や安全性強み
2025年06月10日 (火曜日)
建築用ポリエステル断熱材で、国内で初めてとなる日本産業規格(JIS)認定工場が今夏にも誕生しそうだ。環境対応や安全性に優れる同材のさらなる浸透が期待される。
建築用ポリエステル断熱材には、低融点繊維を混合し熱で溶かして結合するサーマルボンド不織布が主に使われる。接着材不使用の熱融着のためノンホルムアルデヒドで安全性が高い。
断熱性能はグラスウール同等以上で、透湿し湿気をため込まないため長期間劣化しにくく断熱性能が持続する。さらにペットボトルをリサイクルした再生ポリエステルを複合することで、焼却する場合と比べて二酸化炭素(CO2)を固定化でき、環境対応に優れる。施工もしやすい素材だ。
住宅用ポリエステル断熱材の国内生産量は月産50㌧弱で、国内の住宅用断熱材全体の1%ほどのシェアにとどまる。同60%程度を占めるグラスウールと比べると、コスト差もあり浸透しきれていないのが現状だ。
その中で、日本ポリエステル断熱材協会(堀之内新一郎会長)は、信用度の向上や公共建設物などに採用されやすくなるJIS化に4年ほどかけて取り組んで、2022年のJIS化(JIS A 9521)へつなげた。
同協会加盟企業は帝人フロンティア、エンデバーハウス、ヒクマ、フコク、コスモプロジェクトの5社。東京大学名誉教授の坂本雄三氏が名誉顧問、近畿大学副学長の岩前篤氏が技術顧問に就いている。
協会加盟企業の工場が今夏をめどにJIS認定を受ける予定で、JISマークの付いた製品が流通することになる。
今年4月の省エネ法の改正による「断熱等級4」適合義務付けもプラス材料になる。
これまでは断熱材が入っていなくても建築確認申請の許可が下りたが、今回の断熱性能の義務付けで、一定の断熱性が求められ1戸当たりの断熱材の使用量が増える流れにある。「フォローの風になっている」(米田賢一協会事務局長・エンデバーハウス社長)と捉える。
今回の法改正で断熱材の厚みも増す傾向にある。しかし、そのことが頭を悩ます事態にもなっている。加盟社の1社では、国交省の防火構造個別認定をポリエステル断熱材の製品ごとに取得しているが、製品ごとに試験などの費用が数百万円かかると言う。既存の認定製品よりも厚さが求められることで、再認定を取得する必要性が出てきている。
1社ごとに対応するには負担が大きいため、同協会で防火認定を取得する形にできないか検討しており、対応力を高める。
〈フコク/不織布使いの住宅用断熱材/自動車向け技術生かす〉
不織布製造のフコク(福岡県柳川市)は、自動車用吸音材などで培ってきたモノ作りを生かして開発した住宅用吸音断熱材の販売にも力を入れている。
同社は、1932年に寝具製造の古賀製綿として創業。寝具向けを中心に事業を展開していたが、産業資材へシフトし、自動車用吸音材の開発を進めた。
自動車用吸音材は、走行音やエンジン音、そしてエンジンルームの熱などを車内に入れないための部材で、品質の均一化が求められる。
同社は、九州大学の藤本一壽名誉教授と吸音材を共同研究。ポリステルの繊度が0・5デニールの極細繊維を使った吸音材の開発に成功した。繊維を細くすることで音を吸い取る性能が向上し、同じ音を吸収するにしても少ない材料で吸音できるため軽量化にもつなげた。
さらに自動車1台当たり、最大30~40㌔程度の吸音材を使うが、約20~25%の端材が出る。同社は2004年、国内初(同社調べ)となるポリエステル繊維のリサイクル工場を立ち上げ、反毛して再び自動車用吸音材として使用する循環システムを確立した。
自動車の国内生産台数の約25%が集積する九州の立地も強みに販売を拡大。全売上高の7割を占める主力事業に成長した。
不織布は本社工場と大川工場(福岡県大川市)の5ラインで生産。低融点繊維を混合して熱で溶かして結合するサーマルボンド不織布を中心に月400㌧生産し、7割を自動車用、3割を一般寝具、介護寝具用に使用する。
そのモノ作り力を生かし、住宅用吸音断熱材「ポリウール」も開発。断熱性能はグラスウール同等以上で、長期にわたって性能が持続する。吸音性にも優れる。成型の段階で接着剤を使用しないので肌が敏感な人も安心して使用でき、「シックハウス対策品」として訴求する。
自己消火機能を持ち、燃えにくく、万が一燃えてもダイオキシンやシアンガスなどの有害ガスを発生しない。
古賀新一社長は「建材としての認知度も高めて拡販していきたい」と話している。