だからこの仕事が好き⑪/クラボウ・ベトナム 黒田就斗さん
2025年06月13日 (金曜日)
大ヒット商品に関わりたい
学生時代、「自由に使えるお金は全てファッションにつぎ込んでいました」と語る黒田就斗さん(30)。しかし当時の悩みは、肌が弱く化合繊に対し「医者に禁じられるほど」敏感だったこと。現在は改善したが、その頃は「天然繊維であれば問題なく着用できました」。そこで天然繊維に強い企業を『四季報』で調べ、就職先に選んだのがクラボウだった。
入社後は幸運にも繊維事業部に配属され、まずは間接部門を経験。その後、縫製OEMの営業部隊に異動となった。大手SPA向けにカットソー製品を扱う部門で、他社から調達した生地を使い、協力工場で製品化するという、いわば商社的な役割に最初は戸惑ったと言う。「自社のリソースがほとんどない」ことに違和感も覚えたが、やがて自身の提案が形となっていく面白さを実感するようになった。
その後、カジュアル向け織物の営業を1年間担当し、昨年10月からはクラボウ・ベトナムに赴任。「いつかは海外に行くかもと思っていたので、興味がありました」。現在は糸や生地、製品まで何でも取り扱う多忙な部署で毎日業務に奔走している。
日本ブランド向けに現地協力工場の素材を供給する一方、日本製の素材をベトナムの現地ブランドに販売するなど、多様なビジネスを展開。英語にはまだ不安があると言うが、「現地工場と完璧に意思疎通できているとは言えないまでも、経験を重ねるうちに、関係が少しずつ醸成されている実感があります」。
この仕事の醍醐味(だいごみ)は、やはり「最終製品が形となって世の中に出ること」。商品にこだわればこだわるほど、「達成感がある」と実感する。
クラボウは関西出身者が多く、「人当たりが柔らかく、コミュニケーションがとりやすい社風」も魅力の一つ。「困った時には誰かが必ず相談に乗ってくれる」。また、若手にも一定の裁量権が与えられ、「新しいことに挑戦しようとする企業風土が根付いています」。
黒田さんの中長期的な目標は、二つある。一つは「大ヒット商品に関わること」、もう一つは「糸から製品まで携わる中で、利益を出せる新たなビジネススキームの構築」だ。成長著しいベトナムでの仕事は、「そのチャンスが巡ってくる可能性が高い」として、日々の経験を積み重ね、目標の実現に挑戦している。
かつてのようにファッションにお金をかける時代ではなくなった今、それでも黒田さんは言う。「もっと世の中がファッションを楽しむ流れになってもいい。そこにどう当社が関わっていけるか、模索していきたいと思っています」
(毎週金曜日に掲載)