豊島/未来を切り開く事業に挑戦/多方面に広げる共創の輪

2025年06月13日 (金曜日)

 豊島は「ライフスタイル提案商社」を目指し、社会の課題解決につながる事業を追求し続ける。環境に配慮した商材の拡充、進化を図りながら、デジタル社会の構築にも積極的に取り組んでいる。こうした未来を切り開こうとする姿勢は、異業種の企業からも共感を得て、多方面に共創の輪を広げている。

〈産地証明でトレサビ高度化〉

 豊島が提案するトルコ産のトレーサブルオーガニックコットン「トゥルーコットン」は、農場と紡績工場まで特定できる点を特徴とする。トルコの紡績グループ・ウチャクテクスティルと、日系企業向けの独占販売契約を結んだことで、産地まで確実にたどれるトレーサビリティーが実現した。

 2024年にはトゥルーコットンの使用による二酸化炭素(CO2)の排出量削減効果を示すため、トゥルーコットンを使った製品を豊島が納めるまでの過程で生じるGHG(温室効果ガス)を数値化した。

 通常のコットンとトゥルーコットンを比較してCO2排出量削減効果を算出したところ、トゥルーコットンを使ったTシャツで、豊島がかかわる工程のGHG排出量は、1万枚の生産時に1枚当たり約1㌔のCO2排出を削減するという。

 さらにトレーサビリティーの高度化を図るため、最新技術を駆使して土壌などの環境要因から産地の詳細を確認するオリテイン社(ニュージーランド)との協業に着手した。

 オリテイン社は、科学的なトレーサビリティーを推進する。法科学とデータを活用し、製品や原材料に含まれる天然成分を検出する。土壌、気候、標高、降雨状況などの環境要因から、製品の産地の詳細を明らかにしていく。この手法を「オリジン・フィンガープリント」という。

 オリジン・フィンガープリントはサプライチェーン全体で監査に使用され、正規品と不正品を識別する。厳正さを追求した手法であり、改ざん、複製、破損に対する懸念を払拭(ふっしょく)する。

〈AIがもたらす可能性〉

 〝環境”と並行して、人工知能(AI)の活用を通じてファッションの創造性や可能性を広げる取り組みに力を注ぐ。20年に「クロ」や「ブラウズウェア」といった3次元(3D)モデリングソフトを取り入れ、23年には生成AIの活用にも着手した。

 現在、提案が進むのが、柄を生成AIで制作するサービス「バーチャルスタンダード・AIパターン」。

 このシステムは、柄の分野ごとに「柔らかい」「鮮やかな」「エアリー」といった好みを表現する37のキーワードを設けた。加えて「ふつう」「やや」「とても」の3段階でイメージする感覚の程度を選べるようにした。これらを組み合わせて選択すると、数秒で柄が完成する。独自に作成したプリントアート66カテゴリーをベースとした10万柄を貯蔵している。

 「ファブリックジーニー」は、ユーザーがデザイン、生地、色・柄、モデルを順に選択し、生成AIで3次元のモデルに着装させるシステム。人の感性と元になる柄の情報を組み合わせることで、大量のパターンに上る柄を自動で制作する。

 「バーチャルスタンド・AIメジャー」は、アパレル製品の採寸作業を自動化する装置。専用カメラで1枚分撮影するだけで採寸が完了する。採寸箇所はデザインに応じてモニター画面上で調整できる。

 作業時間を大幅に短縮する上、従来の手作業より高精度な採寸データを提示する。

 これらのサービスを提案するデザイン企画室とDX推進室は、取引先に説明を行いながら、効果、改善の可能性が高いものを中心に、サービスの開発を進めている。

〈異業種連携を積極的に推進〉

 「循環型社会の構築」という目標を共有できる異業種企業との協業にも積極的に取り組んでいる。

 豊島とアーバンリサーチは24年から、トヨタ自動車が推進する「トヨタ・アップサイクル」プロジェクトと3社連携の事業を行っている。同プロジェクトは、自動車の製造過程で発生する再利用が困難な廃棄物を再び原料として使用し、新しい商品・サービスに生まれ変わらせる。実際にトートバッグやペンケースなどを製造し、アーバンリサーチの店舗で販売した。

 豊島が独自に手掛けるプロジェクトも、異業種での活動の機会を増やしている。

 オーガニックコットンの普及を通じて社会に貢献するプロジェクト「オーガビッツ」は、8月29日に開始から20周年を迎える。これまでアイテムにオーガニックコットンを10%以上使用することを要件とし、ファッションブランドに参画を呼び掛けてきた。

 オーガビッツ製品は、開催中の「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)の会場でも販売されている。会場内に開設されたセブン―イレブンが取り扱う「パックTシャツ」は、オーガニックコットンを100%使用した。3種類あるデザインのうち2種類は、サーフアーティストの豊田弘治氏が手掛けた。

 世界中から人が集まる万博会場で、オーガビッツ製品を通じて、環境への思いを発信している。

 廃棄予定の食材を染料に再活用するプロジェクト「フードテキスタイル」も、10周年の節目を迎えた。最近で話題を呼んだのが、アシックスとロッテの協業によるスポーツシューズ。フードテキスタイルは、チョコレート製造で出るカカオ豆の皮の色で染めた生地の生産を担った。

 商品の売れ行きは好調で、異業種連携によって生まれる可能性を示している。