LIVING-BIZ vol.119(2)/特集 寝具寝装モノ作り/数量輸入増、国内生産減/25秋冬向けに好材料も
2025年06月16日 (月曜日)
2025年のふとん生産数量は3月まで、輸入が増加する一方、国内生産が減少している。輸入では特に合繊ふとんの増加が目立つ。羽毛ふとんは、羽毛原料価格の低下で25秋冬に向けて企画しやすくなってきており、仮需が高まりそうだ。
〈輸入数量13%増/合繊ふとん中心に増加〉
足元の家庭用寝具需要は、必ずしも高くない。食料品などの物価高の影響で、寝具を購入する余裕が以前よりなくなっており、後回しにされる傾向があるとみられる。25年に入ってからも、2月の気温低下で例年以上に冬物が売れたことを除いて全般的に伸び悩む。
財務省の貿易統計によると、25年1~3月のふとん輸入数量は、前年同期比約13%増の421万枚。全体の89%を占める合繊を中心とした人造繊維ふとんが約14%増と押し上げた。羽毛原料高騰で、羽毛ふとんやダウンケットの企画が減り、合繊ふとんへシフトしたことが要因の一つと考えられる。
海外生産では、中国から東南アジアへのシフトが進む。特に日系大手量販店が中国からベトナムなどへ調達を切り替えている。
ベトナムはロット数が大きく、日系大手量販店や大手寝具製造卸以外は活用しづらい。そのため、小ロットに対応できる中国山東省などのニーズも引き続き高い。中国は原料、素材から生産できる体制が整っており、寝具の生産拠点として「少なくともあと5年」(寝具関連企業)は中心になると考えられる。
さらに中国は、米中貿易摩擦の影響などで工場を稼働させるために、価格訴求を含めて日本へのアプローチを強めている面があるとされ、存在感が一段と高まりそうだ。
国内生産は、減少傾向が続く。経済産業省の生産動態統計によると、従業員20人以上の国内事業所を対象とした25年1~3月のふとん生産数量は、前年同期比15・4%減の44万枚。羽毛・羽根ふとんは2・8%減だったものの、羽毛・羽根を除く掛けふとんが28・5%減、敷ふとんが21・1%減と大幅に落ち込んでいる。国内寝具市場の低迷が直撃しているとみられる。
〈25秋冬の仮需期待/羽毛価格低下で数量増か〉
25秋冬に向けては、前秋冬シーズンの在庫消化で仮需が期待されているほか、羽毛原料価格低下で羽毛ふとんの企画がしやすくなり、生産数量が前秋冬より増える可能性がある。
24秋冬は、前シーズンからの持ち越し在庫を抱えて臨んだシーズンだったが、24秋冬の実需が24年11、12月と堅調で、25年2月も気温低下で冬物の販売が良かったことで在庫が薄くなり、25秋冬向けの仮需が増える素地がある。ふとん地製造卸は「23年から持ち越した流通在庫の消化がある程度進んだととらえている」とし、25秋冬向けに期待する。
ただ先行きの不透明さから、寝具製造卸や小売りが慎重になっている面もある。どこまで仕込むのか。好材料もあるものの、難しい判断になりそうだ。
〈東洋紡せんい/ベトナムで改質わた・糸量産/25秋冬向けで採用〉
東洋紡せんいのマテリアル事業部ライフマテリアルグループは、ベトナムで改質わた・糸を量産する。既に25秋冬向け寝装品や26春夏向けインナーで改質した綿のわたの採用が進んでいる。
得意とする改質技術を生かし、海外生産のコストメリットや現地供給能力を高めることで差別化する。綿が先行し、ベトナムで協力工場を活用し、改質加工わた、紡績糸の生産体制を構築している。
綿を改質して吸湿発熱機能を高めた糸「ホットナチュレネオ」が既に、国内の25秋冬向けブランケットに採用されている。ホットナチュレネオの吸湿性をより高めた有機綿タイプも26春夏向けインナーで採用された。
ベトナムで改質レーヨンの量産体制もこのほど構築。日本で作る改質わたと同等の性能を持つ改質レーヨンを供給できる。吸湿性が高く、水分を蓄える改質レーヨン糸「リフレス」、ウールを超える吸湿性を持つ「スーパーリフレス」などを供給する。敷パッドやふとんの中わた用へ提案する。
ASEAN地域で、吸湿性の低いポリエステルを改質することで綿並みの吸湿率に高めたポリエステル短繊維「グレファージュ」の生産体制構築も進める。汗と蒸れ感を同時に処理することができ、寝具の中わた用途などへ訴求する。
〈24年のふとん生産数/前年比7.8%減〉
経済産業省の「生産動態統計」によると、従業員20人以上の事業所の2024年のふとん生産数は、前年比7・8%減の223万枚だった。2020年以降、300万枚割れが続いている。
掛けふとんは3・4%減の39万3121枚、敷ふとんは3・0%減の85万1387枚、こたつふとんは36・8%減の2万9330枚、羽毛・羽根ふとんは12・1%減の95万枚2062枚だった。