繊維ニュース

探訪 ユニフォーム一新!/魅せて“おもてなし”を

2025年06月19日 (木曜日)

 日本政府観光局(JNTO)によると、4月の訪日外国人旅行者数(推計値)は、前年同月比28.5%増の390万8900人となり、単月としては過去最高となった。大阪・関西万博の開幕も追い風となり、サービス業や輸送業を中心にユニフォームの刷新が活発になってきた。魅せるユニフォームを通じて、日本ならではの“おもてなし”の心を表現する。

〈南海電鉄/「対極」をコンセプトに〉

 南海電気鉄道(南海電鉄)は創業140周年を記念し、32年ぶりに駅員や乗務員のユニフォームを刷新した。デザインは沿線出身のコシノジュンコ氏が担当し、3月26日に南海なんば駅で初披露された。グレーを基調にコーポレートカラーのオレンジをアクセントとし、「対極」をコンセプトに品格と安心感を表現。ポリエステル素材を採用し、軽量でシワになりにくくストレッチ性にも優れる。4月から着用を開始。発表会では、映画でコシノ氏役を演じる縁から俳優・鈴木砂羽さんが一日駅長として登場し、制服姿で式典に参加した。

〈JR九州ホテルズアンドリゾーツ/濃紺基調にリラックス感〉

 JR九州ホテルズアンドリゾーツ(福岡市)は、運営する11ホテルの制服を6年ぶりに刷新し、4月から着用を開始した。300点以上の企業制服を手掛けた岡義英氏がデザインを担当。「リラックス」をテーマに、濃紺を基調としたジェンダーレスなデザインを採用。ノーカラージャケットに白と金のアクセントを施し、爽やかで印象に残る装いとした。ノーパッド・ボタンレス仕様で着心地も追求。ベストの導入により6種のコーディネートが可能。JEPLAN(川崎市)のリサイクルシステム「ブリングユニフォーム」を導入し、環境にも配慮した。

〈ホテル日航関西空港/「信頼のシンフォニー」〉

 ホテル日航関西空港は6月の開業30周年を機に、4月からユニフォームを一新した。ネービーを基調に「信頼のシンフォニー」をコンセプトとした上質で品のあるデザイン。部門代表によるプロジェクトチームを組織し、コンペと投票を経て決定された。普遍性と快適性、動きやすさを重視し、環境配慮素材を使用。スカーフやネクタイには清潔感と安心感を込めた。旧制服はリサイクルし、記念コースターもアップサイクルで制作する。

〈高島屋/53年ぶりにパンツ導入〉

 高島屋は、店内案内係の春夏用制服を5年ぶりに刷新した。デザインを手掛けたのは「ジュンアシダ」クリエーティブディレクターで「タエアシダ」デザイナーの芦田多恵氏。シンプルで気品ある高島屋のイメージを現代的に表現し、ブルーグリーンのカラーにシャープさと柔らかさを融合。通気性に優れたマットストレッチツイル素材を使用し、快適性も追求した。今回は53年ぶりにパンツも導入され、着用者の体調や気候に応じた柔軟な着こなしが可能になった。

〈旭ビルウォール/快適性と統一感重視〉

 建設業の旭ビルウォール(東京都台東区)は、創業以来初となる作業用ユニフォームの全面リニューアルを実施し、1月から着用を開始した。合併による旧ロゴやカラーの混在が課題となっており、統一感のあるブランド構築と快適性向上が目的。社内委員会を立ち上げ、従業員の意見を取り入れながら機能性とデザイン性を両立した。素材にはストレッチ性や吸汗速乾性に優れた「TSエコダブルライトクロス」を使用。静電気帯電防止仕様や反射材を取り入れ安全性にも配慮した。製作パートナーは中外産業(名古屋市中区)とTSデザイン(広島県福山市)。

〈日本データー/多様性と快適性両立〉

 日本ビジネスデータープロセシングセンター(日本データー、神戸市)は、4月から受託先医療機関で勤務する医療事務担当者の制服を一新。従来のフォーマルな制服を見直し、多様性・快適性・機能性を追求したデザインへ刷新した。ジェンダーレス視点を取り入れ、男女共通のジャケットを採用。ボトムスやインナーは私服着用が可能で、個性の尊重を図る。羽織るだけで着脱できる仕様や抗菌・防臭裏地、家庭洗濯対応など、衛生面と働きやすさも両立させた。

〈福山通運/カイハラ製デニム採用〉

 福山通運は、創業者・渋谷昇名誉会長の生誕120周年に合わせ、デニムを使った新ユニフォームを導入。2024年11月から約1万人のセールスドライバーが着用している。本社のある広島県福山市が日本一のデニム産地である縁から、カイハラが企画・製造を担当。ストレッチ素材やラグラン袖に加え、荷物保護のカバーや反射材も装備し、安全性と機能性を両立させた。環境配慮型の染色技法により、水使用量を約40%、化学薬品を約50%削減した。長期着用可能な仕様で、廃棄削減にも貢献する。

〈パナソニックハウジングソリューションズ/20通りの組み合わせ可能〉

 パナソニックグループのパナソニックハウジングソリューションズ(大阪府門真市)は、全国60カ所のショールームで接客を行う「ショールームアドバイザー」の制服を4月下旬から刷新。気温や体調、業務内容に応じて、ジャケット、ベスト、パンツ、スカートなど20通りの組み合わせが可能な設計とした。生地には伊藤忠商事のケミカルリサイクルポリエステル「レニュー」を採用し、ストレッチ性と動きやすさを両立。ボタンにも環境負荷低減素材を用いるなど、快適性とサステイナビリティーに配慮したユニフォームに仕上げた。