クラレ PVA繊維は高付加価値分野へ
2025年06月20日 (金曜日)
クラレは19日、経営説明会を開き、ポバール樹脂(ポリビニルアルコール)事業の高付加価値戦略などを示した。高機能製品で年率8%の成長を見込むほか、新規ソリューションでは細胞培養関連に目を向ける。PVA(ポリビニルアルコール)繊維は高付加価値分野へのシフトを強化する。
同社は、ビニルアセテートモノマー(VAM)を基盤に、樹脂からフィルム、繊維まで製造・販売する。その中でも1950年に世界で初めて工業化に成功したポバール樹脂が主軸となる。説明会で川原仁社長は「75年が経過した現在もまだまだ新しい用途がある」とし、「川下のフィルム、繊維もしっかりと取り組む」と強調した。
年率で8%の成長を見込む高機能製品では、特殊変性ポリビニルアルコール「エクセバール」や「クラレポバール」の特殊銘柄を上げた。エクセバールは、ガスバリア紙用途が期待できるとし、クラレポバールの特殊銘柄は、塩ビ重合用分散剤用途などで成長を図る。
新規ソリューションでは、微小粒子状細胞固定化担体(マイクロキャリア)「スキャポバ」を2024年に上市。培養効率や安全性、ハンドリング性といった特徴を生かして拡大を目指す考えで、国内展開に加え、今年下半期からは海外の研究機関などへのサンプル提供も開始する計画だ。
PVA繊維「クラロン」「クラロンK―Ⅱ」については、展開領域を広げる。これまでの漁網やロープといった“伝統的分野”だけでなく、リチウムイオン電池セパレータをはじめとする「高付加価値分野へシフトする」(川原社長)と話すなど、今後の方向性を示した。
高付加価値へのシフトとともに、セグメンテーションに関しても言及した。PVA繊維は現在、繊維セグメントに位置付けており、「現中計期間中の変更はない」としつつ、「ビニルアセテートセグメントへ変更することも次の課題として検討する」との認識を示した。