生地輸出連載 悲願達成に向けて⑧/小原屋繊維 企画営業部主任 中瀬貴之氏
2025年06月23日 (月曜日)
手間・丁寧・地道が鍵
――生地輸出の現状は。
取り組み開始から5年ほどでまだ小規模ですが、当初は営業担当1人がネット経由で中国・韓国に販路を開拓する段階から、2024年以降、海外展にも挑戦し、直接輸出額はこの間、約3倍に拡大しました。目下、輸出額を3億円台に乗せるのが目標です。
現在は中国人スタッフ2人を含む5人体制で、英語版ウェブサイトも動画・画像を含めて充実させています。商品紹介に加え、日本製品に抱かれる「高品質で丁寧なモノ作り」のイメージにふさわしい企業であるという発信も、意外に重要なことを実感します。
――販売実績のある国や展示会出展は。
24年に「インターテキスタイル上海」と「プルミエール・ヴィジョン・パリ」に初めて出展し、25年は「ミラノ・ウニカ」「インターテキスタイル深圳」にも挑戦、さらに出展検討中の展示会もあります。
当初の経緯から現在も約9割は中国向けですが、欧州向けもこの2年で、英国・フランス・ドイツ・ベルギーなどへ販売実績が付いてきました。欧州出展初年は、設営や見本発送など全てが手探りのトライアル&エラーでしたが、2年目からはリピート客も生まれ、着分や小ロットながらバルク受注も見られるようになっています。
――自社の強みは。
天然素材の表情感や表面変化が強みで、特に墨染めや天日干しなど、端的に“手間のかかる”生地は海外では企画しにくい領域で特に響くようです。ウールやリネンの交織品は100%素材と異なる独自性に加え、原料高騰下でもコスト面も含めて評価が高く、このあたりも日本製ならではの特徴と言えそうです。備蓄品の即納対応も海外で特に重宝される機能です。
――輸出拡大へ課題は。
ただ備蓄品番といえども発注量などで即納が難しく、納期の制約で成約を逃す悔しいケースもあります。ロットや価格帯から見て、当社商品の理想的販売先はハイブランドですが、そうした顧客とどう出会うかが今後の課題です。デジタル技術で企業を変革するDX化の進展で外国語の意思疎通の障壁は格段に下がり、メールでの新規営業やウェブ経由の引き合いへの対応も飛躍的にしやすくなりました。海外での認知度向上も含め、こうした日々の地道な積み重ねの重要性を改めて感じています。
(毎週月、火曜日に掲載)