クローズアップ/村田機械 常務繊維機械事業部長 正井 哲司 氏/来期から20%増計画
2025年06月25日 (水曜日)
村田機械は今期(2026年3月期)から新中計を開始した。正井哲司常務に繊維機械の方向性を聞いた。
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――繊維機械事業の前期はいかがでしたか。
自動ワインダーを新機種「AIcone」(アイコン)に切り替える際の計画減産もあって売り上げは減りましたが、利益は前年並みでした。アイコンは昨年4月に小量ラインで生産を始め、8月には完全切り替えを完了してフル稼働としましたが、昨年末ごろに市況が悪化し、想定ほどは伸びませんでした。
――今期の市場環境をどうみますか。
米国の関税政策の影響など先が読みづらい環境にあります。新中計が今期から始まりましたが、初年度は前中計の3年平均値を下回る目標とし、2年目と3年目に前中計平均値の20%増を目指す形にしています。
――拡大のポイントは。
自動ワインダーはアイコンの量産効果を出し、「ボルテックス」も着実に伸ばします。加賀工場では第12棟を建設中で、生産能力を今の月2万錘から2万5千錘に増強します。セミナーの開催を増やして保守に関するレクチャーを行うなど顧客サービスも強化します。
――ワインダーの開発のポイントは。
アイコンではウスター社との協業で、毛羽の状況を監視しながらスピードを自動調整する機能を開発し、糸品質と生産量向上を両立させました。この機能をうまく使えば10%ほど生産性を高めることができます。さらなる省エネや高生産性の追求とともに、こういった省人化、自動化、デジタル化がセットになった開発も重要なポイントになります。
ノンストップワインダー「FLcone」(ファルコン)は、優れたパッケージ品質が売りです。これまでにない形のワインダーなので一気に伸びるとはみていませんが、要望される顧客に着実に販売して、次のスタンダード機に育てます。
――渦流精紡機「ボルテックス」は。
多品種・小ロットに向く機械として評価を高めており、長繊維使いの「コアヤーン」への注目も高まっています。今後はさらなるエア消費量の低減や省エネ、デジタル化のほか、リサイクル繊維への対応などニーズに沿って開発を進めます。
――IoT総合管理システム「MSS」(ムラテックスマートサポート)も広がっています。
インドを中心に有償契約が300社を超えるなど着実に広がっています。今は世界で使われている当社機の約30%がMSSでつながっています。導入した企業は、メンテナンス性の向上や人員の削減などの効果を実感してくれています。今後はサブスクリプション式なども検討し、さまざまな地域で広げていきます。