繊維機械/市場の不透明感強まる/設備投資は様子見に
2025年06月26日 (木曜日)
繊維機械の世界市況は国によって好調な分野も見られるが、全体として低調な状況が続く。新型コロナウイルス禍での需要拡大が大きかった分、反動が長引いているという見方がある中で、米国の関税政策などが追い打ちをかけ、当面の受注量を慎重に見る声も多い。(星野公清)
繊維機械の市場はこの数年、盛り上がりに欠く。コロナ禍での各国での補助金政策やサプライチェーン混乱があった2020年後半からの好況が大きかったことの反動を指摘する声もあり、分野によってはかつての景気循環より低調期が長引いている。そこに米国の関税政策などが追い打ちをかけ、当面の市場環境を厳しくみる声が増えている。
村田機械の繊維機械事業は前期(25年3月期)、前の期に比べ約15%の減収だった。自動ワインダーの主力を新機種「AIcone」(アイコン)に切り替える計画減産が背景だが、昨年末ごろの市況悪化も影響した。
今期(26年3月期)からの新中計では自動ワインダー、渦流紡績機「ボルテックス」とも伸ばす考えで、加賀工場では第12棟を建設して生産能力を今の月2万錘から2万5千錘に高める。ただ、米国の関税政策などで市場の不透明感が強く、今期は慎重にみる。新中計初年度の目標は、前中計の3年平均値を下回る形に設定し、来年度と再来年度で同20%増を狙う。
津田駒工業は、中国のアウトドア市場拡大を受けて、前期(24年11月期)からウオータージェット織機の需要が伸びている。グローバルブランドが中国以外での調達を志向する中、中国企業の海外進出やそれに対抗する台湾企業の海外進出の動きも後押しする。
その流れは足元も続くが、一部では商談にブレーキがかかる局面も出ている。特に為替が動いていることが大きく、中国の一部ユーザーのほか、インドや台湾などでもいったん様子見になる事例もあると言う。
合繊用機械のTMTマシナリーも今期(26年3月期)の市場環境を慎重にみる。納期が約1年なので今期の販売は読めているが、26年以降の販売に関わる受注について「少し厳しくなる」とする。背景は主力の中国市場でポリエステルでの大型計画が一部を除いて一巡したことがある。昨年に堅調だったナイロン用も、ユーザーの差別化志向で投資決定に時間がかかるとみられることなどもある。
島精機製作所の前期(25年3月期)は減収で各損益が赤字となった。中国系は東南アジアでの投資が順調で、バングラデシュなども横ばいだったが、イタリアなどが苦戦した。
今期は大きく業績を回復させる計画で、コストダウン機の投入も計画している。ただ、市場環境は不透明感が強く、4月ごろからは米国向けにモノ作りするユーザーの一部が様子見になるほか、自動車など産業資材用での拡大を狙う自動裁断機事業も関税の影響があるとみる。