特集 環境(3)/社会要請に応える先進の取り組み/帝人フロンティア/東洋紡せんい/旭化成

2025年06月26日 (木曜日)

〈「エコペット」30周年/回収啓発活動にも力入れる/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアのリサイクルポリエステル繊維「エコペット」が今年、30周年を迎えた。合繊リサイクルのパイオニアの1社とし、リサイクル技術の高度化に加えて、繊維製品の回収に関する啓発発動にも力を入れる。

 世界的にリサイクル合繊のニーズが高まる中、同社はサーキュラーエコノミーの実現に向けて“繊維to繊維”リサイクルに早くから取り組んできた。そのために単純にリサイクル技術を開発するだけでなく、素材を採用するパートナー企業との取り組みが重要になるとの考えだ。

 その取り組みの一つが良品計画と連携したポリエステル繊維製品の完全循環型リサイクルプロジェクト。良品計画が店頭回収した使用済み繊維製品のうち、リユースできないものからポリエステル繊維製品を分別し、帝人フロンティアがケミカルリサイクルする。アパレル製品の易リサイクル性を高める設計の開発などでも連携する。

 また、繊維リサイクルの鍵を握るのが消費者も参加する形での回収システムの構築だ。このため消費者を対象とした啓発活動にも力を入れる。今年から芸能プロダクションのLDH JAPAN(東京都目黒区)と共同プロジェクトを開始した。所属グループであるEXILEの全国ツアーに出演するメンバーにエコペット使いのシャツを提供し、ツアー会場では使用済み衣料品回収ボックスを設置する。これを原料に再生し、次のツアーに向けてグッズを企画する。

 LDH JAPAN主催の小学生フットサル大会にも2025年からオフィシャルスポンサーとして参加し、再生ポリエステル繊維を使った記念品の提供や使用済み衣料品のテスト回収を行い、子供たちに循環型リサイクルの重要性などを伝える。

 30周年を記念して、今年秋にはエコペットに特化した展示会の開催も予定している。

〈多彩なリサイクル繊維/熱可塑性樹脂で複合材も/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいは、綿とナイロン繊維で多彩なリサイクル繊維をそろえる。新技術を積極的に導入した。また、熱可塑性樹脂を使った繊維複合材の開発にも取り組み、資材分野でも環境負荷低減に貢献することを目指す。

 注目を集めているのがリサイクル綿糸「さいくるこっと」。通常の反毛とは異なる開繊技術によって繊維長が維持されており、再生原料100%や細番手糸の紡績が可能になった。欧米輸出に取り組む産地のテキスタイルメーカーが高い関心を持っており、婦人アウター向けで採用が始まった。

 ナイロン繊維はマテリアルリサイクルタイプの「ループロン―M」、ケミカルリサイクルタイプの「ループロン―C」をラインアップする。特にループロン―Cはマスバランス方式も本格的に導入した。マスバランス方式のリサイクル原料を使用することで、バージン原料と変わらない品質を確保できる。モノフィラメントなど資材用途でも採用が始まった。

 もう一つ新規事業として力を入れているのが熱可塑性樹脂による炭素繊維複合材の開発だ。一般的な熱硬化性樹脂による炭素繊維複合材と比べて加工工程でのエネルギー使用量が少ない特徴がある。強度面でも糸段階で樹脂を含侵させているため、通常の熱可塑性樹脂複合材と比べて強度が高い。既に車両資材や福祉用品、スポーツ用品といった用途で採用に向けた商談が進んでいる。

 炭素繊維複合材料は軽量化によるエネルギー消費削減などに貢献する素材として今後の需要拡大が期待できる。加えて熱可塑性樹脂はリサイクル性も高い。広い意味で環境負荷低減に貢献する素材として提案を進める。

〈技術サポートも重視/副生物の再利用も開発中/旭化成〉

 旭化成は、キュプラ繊維「ベンベルグ」の特性を生かし、環境配慮素材としてのアプローチを強化している。また、素材特性だけでなく加工工程での環境負荷低減技術を染工場に提供するなど技術サポートに力を入れる。

 近年、欧州ではグリーンウオッシュ規制も含めた環境規制が一段と強まった。このため欧州の有力ブランドは信頼できる環境配慮型繊維素材を求める動きが強まった。これを受けて旭化成のベンベルグ事業部は、重点市場の一つであるイタリアを中心にベンベルグが欧州の環境規制にも適応した素材であることを改めて打ち出す。

 その一環として11月にイタリアでイベントも開催する予定。ラグジュアリーブランドを中心に需要家を招き、ベンベルグに関するプレゼンテーションなどを行う。そこでも改めて環境配慮を打ち出す考えだ。

 また、ベンベルグの染色加工ができる染工場に限りがあることから、欧州とインドでの技術サポートにも力を入れる。特に加工工程での二酸化炭素排出量や水使用量の削減につながる技術を、秘密保持契約などを結んだ上で提供している。25年度(26年3月期)中には技術サポートを完成し、海外で本格的に加工ができる体制の構築を目指す。

 リサイクル技術の実用化にも取り組む。既にキュプラ長繊維不織布「ベンリーゼ」の製造工程で発生する端材を紡績用短繊維として再利用する取り組みを進めているが、今後は長繊維の製造工程で発生する端材も反毛して紡績原料として再利用することにも取り組む。また、紡糸工程で発生するセルロース系の化合物など副生物も再利用する技術も開発中だ。