特集 環境(5)/社会要請に応える先進の取り組み/シキボウ/新内外綿/トーア紡マテリアル

2025年06月26日 (木曜日)

〈紙おむつの再資源化を促進/「デオマジック」で臭気対策/シキボウ〉

 シキボウは、特殊鋼材の販売を手掛けるサハシ特殊鋼(名古屋市港区)と連携し、使用済み紙おむつを再資源化するマテリアルリサイクルの促進に取り組んでいる。シキボウの消臭剤「デオマジック」と、サハシ特殊鋼の摩擦熱による粉砕乾燥技術を組み合わせたスキームを構築し、10月には実証実験を始める。

 デオマジックは、悪臭を他の香りで覆い隠すマスキング技術を応用し、不快成分を取り除いた香料成分を人工的に合成した消臭剤。悪臭成分を吸収し、良い香りに転換するユニークな消臭メカニズムで、国内外の工場や産廃処理場などで採用実績がある。

 両社は2年前から連携し、愛知県が主導する循環型ビジネスモデルのプロジェクトにも採択されている。スキームの要となるのは、サハシ特殊鋼が独自開発した「粉砕摩擦乾燥装置」だ。使用済み紙おむつを分別・洗浄せずにそのまま投入し、摩擦熱により一気に乾燥・粉砕。得られた乾燥物は、ポリプロピレン樹脂などと複合し、プラスチック製品に再生するためのペレットへと加工される。

 処理過程で発生する臭気にデオマジックを応用する。当初は徐放性カプセルを活用していたが、コスト面の課題から、デオマジックを含浸させた消臭パウダーを開発した。コストはカプセルに比べ3分の1に抑えられると言う。

 今秋10月には、愛知県刈谷市の病院で実証実験が始まる予定。再生されたペレットは、医療用のペールボックス(ゴミ箱)として成形・再利用される。

 使用済みおむつのリサイクルに関してはさまざまな取り組みがあるが、衛生面・臭気・保管といった課題が多い。このスキームではこれらの課題をクリアし、施設内で完結できることから導入のハードルが低い。実証実験が成功すれば、一気に導入事例が拡大する可能性がある。

〈エーゲ海有機綿糸が人気/細番手で美しい表面感/新内外綿〉

 新内外綿が扱うトルコ産オーガニックコットン糸「エーゲ海オーガニック」が売り先を広げている。

 この糸は、“生産者の顔が見える素材”として24年春に発売された。エーゲ海沿岸部の有機栽培綿花を紡績まで一貫してトルコの企業が手掛ける。織物にも使えるが、新内外綿がニット生地・ニット製品OEM事業を展開していることもあって、ニット製品での採用が増えている。

 オーガニックコットン糸では珍しく60番手という細番手があることや生地にした時の美しい表面感、繊細な肌触りが市場から高く評価されている。繊維長が長い原綿上の特性と毛羽を抑える紡績方法によりオーガニック綿花でありながら“奇麗め”の生地を作ることができる。

 新内外綿は自社のアパレルブランド「mocT」でこの素材を使って、製品でもアピールを強めている。エーゲ海オーガニックは20、30、40、60番単糸で展開する。糸の毛羽の少なさや生地にした時の自然な光沢は、この糸がコンパクト精紡であるため。この紡績方法は、毛羽を少なくする製法で、繊維長の長い綿にしか使えない。

 同社は今月、製造者のトルコ企業に4回目の発注をかけた。1回当たり7トンコンテナ1本を輸入する。

 発売から1年余りで計4回という発注ペースについて同社は、「動きはかなり良い。オーガニック糸で美しい表面感が出る素材は少ないからではないか。かなり(採用が)広がってきている」と話している。

 有機野菜が消費者の間で“安全・安心な”イメージで定着しているように、オーガニックコットンも同様の安心感を与える素材として、これからさらに広がる可能性がある。

〈グループで環境配慮推進/CO2排出量ほぼ半減へ/トーア紡マテリアル〉

 トーア紡コーポレーションでは今期からスタートした3カ年の中期経営計画で、環境配慮とサステイナビリティーを重要な柱として掲げている。グループで2030年のCO2排出量(スコープ1―2)目標を、13年比46%減とし、産業廃棄物排出量についても同様に30%削減を目標としている。

 グループのトーア紡マテリアルの四日市工場(三重県四日市市)では23年に、老朽化した炉筒煙管ボイラーを高効率の貫流ボイラーに更新し、重油から都市ガスへの燃料転換を実施。ボイラーの設置位置も見直し、配管距離を大幅に短縮した。遠隔監視や自動制御システムも導入し、運用効率と安全性を向上させた。

 また、電力の見える化を目的に、デマンド監視システムを構築。リアルタイムで各ラインの電力使用量を把握できるようにし、現場の省エネ意識と協力体制を強化。契約電力の削減にもつながった。

 補助金や電力会社の支援も活用し、LED化などの省エネ施策も推進。結果的に、燃料使用量は16・5%、CO2排出量は38・7%削減することができた。

 これらの取り組みでは昨年、「エネルギー管理優良事業者」として省エネ分野で功績が顕著な事業者に贈られる「中部地方電気使用合理化委員会委員長表彰」を受賞。中部経済産業局の「中部地域の省エネ応援サイト」にも事例として紹介された。

 省エネ補助金や電力会社のサービスも積極的に活用し、全社的な省エネ活動を推進。今後も、再生可能エネルギーの導入や生産設備の高効率化を進める。