特集 環境(10)/社会要請に応える先進の取り組み/豊島/タキヒヨー/レンチング

2025年06月26日 (木曜日)

〈食材再活用の染色を推進/協業の輪が多方面に広がる/豊島〉

 「FOOD TEXTILE」(フードテキスタイル)は、豊島と色の原料を提供する食品関連企業、その生地で商品を展開する企業の3者によるサステイナブルな協業プロジェクトブランド。開始から10周年を迎えた。

 未活用状態・規格外となった食材やカット野菜の切れ端、コーヒーの出がらしなどを食品関連企業や農園から買い取り、食材から抽出した成分を染料にして生地や糸を染め上げ、さまざまなアイテムに使用する。

 このほど初めてペット服にも採用された。オンワードグループのクリエイティブヨーコ(長野市)が展開するペット用品専門ブランド「ペットパラダイス」が、ブランドパートナーである歌手の倉木麻衣さんとの共同企画商品第2弾に、フードテキスタイルの生地を使用している。

 今回の商品は〝ペットと人をつなぐ〟をテーマにした、ペットと飼い主がおそろいのコーディネートを楽しめるTシャツ。倉木さんのペットへの愛情を表現したイラストをデザインに取り入れた。

 近年はシューズへの採用も増えており、中でも、アシックスとロッテの協業によるスポーツシューズは、チョコレート製造で出るカカオ豆の皮の色が、商品の特徴になっている。

 2月には、ムーンスターの子供向けシューズ「ムーンスターキャロット」のブランド誕生40周年モデルの第1弾商品に採用された。

 フードテキスタイルのコンセプトに深く共鳴したブランドとの協業も進んでいる。

 フジボウアパレルの高級肌着ブランド「アングル」は、創設から130年以上も品質にこだわり続ける。「肌にも環境にも優しい」を追求する中、フードテキスタイルとの協業を通じて、持続可能な社会づくりを目指していく。

〈環境配慮型事業を具現化/生地の生産・輸出、発信強化も/タキヒヨー〉

 タキヒヨーはサステナブルセクション(S)を軸に、さまざまな環境に配慮した取り組みで事業を推進する。生地の輸出に向けた適正な生産経路の構築や、国際認証の取得と活用も進める。使用済みの衣服や生産工程で排出される裁断くずを製品に再生する循環スキームも生かす。

 同Sは三つのチームで編成する。プロダクションチームは環境配慮型の素材開発や、関連する商材の企画から販売を行う。LCAサプライチェーン構築チームは生産経路の構築支援など、サステイナブルな事業の基盤作りに関わる。PRチームは環境への取り組みを発信するほか、企業・行政・教育機関や学生団体との協業でイベントを企画・実施している。

 取り組みが具体化した事業の一つが生地輸出だ。グローバルトレードSが海外ブランド・企業に向け輸出を拡大する。環境に配慮した生産経路の構築や、環境に負担が少ない原料の調達で、海外の販売先から支持を得る。

 国内では北陸や、デニムを生産・供給する岡山・広島の産地企業などと協業を深める。環境配慮型ビジネスの構築を共有しつつ、国際認証の取得を支援する取り組みも強める。

 環境配慮型の原料や仕組みを使用した事業にも注力する。インドで栽培し、オーガニック繊維製品に関する国際認証「GOTS」を受けたオーガニックコットン使い生地の訴求も強める。回収した衣類や裁断くずを反毛した再生綿で、新たな製品の企画・販売も進める。

 このような活動の紹介・広報で企業イメージを向上させるだけでなく、政府・行政への周知にも力を入れたいとする。同社だけでなく、事業に関わり協業する企業や販売先が取り組む姿勢もアピールしたい考えを持つ。

〈環境イベントに積極協力/ブランドテーマも刷新/レンチング〉

 再生セルロース繊維大手のレンチングは、天然由来繊維である再生セルロース繊維「テンセル」が環境負荷低減に貢献できる素材であることを一段と認知させるために、国内外で環境関連の啓発イベントに積極的に協力している。

 同社は、ファッション産業の透明性を高める社会運動「ファッションレボリューション」に積極的に協力している。4月にはファッションレボリューションジャパンが主催したシンポジウムにも参加。会場にブースを設置し、テンセルなど同社の素材を展示した。

 イベントにはオンラインも含めて約300人が参加し、繊維業界関係者だけでなく約半数を学生が占めた。このため学生に向けてもテンセルのトレーサビリティー確立やリサイクルの技術、生分解性など環境負荷低減に貢献できる素材であることの認知を高める機会となった。ブランドテーマも昨年に「ネイチャー。フューチャー。アス。」(自然。未来。私たち。)と刷新し、市場とのコミュニケーションを重視している。

 近年、環境配慮に対する意識が高いアパレルブランドの間でテンセルの採用が拡大している。また、他の素材メーカーとの連携も進んだ。その一つがカイハラ(広島県福山市)、旭化成と共同開発した環境配慮型プレミアムデニム「SAISEI」コレクションだ。

 原綿の一部に廃棄綿布などを原料に再利用するレンチングのリフィブラテクノロジーを採用したトレーサブルレーヨン「レンチングエコヴェロ」、ポリウレタン弾性糸にリサイクル原料を一部使用した旭化成の「ロイカEF」を採用した。カイハラの糸染め・製織技術を組み合わせることで、リサイクル原料を使用しながら高品質なプレミアムストレッチデニムを実現した。