特集 環境(13)/環境対応の連携に広がり/東亜紡織/TC―Net/エシカルファッション協議会
2025年06月26日 (木曜日)
地球環境対応は不可欠な要素であり、繊維関連企業はそれぞれの取り組みを深化している。ただ、気候変動対策や衣料品の水平リサイクルなどは個社だけでなく、業界を挙げた、時には業界の枠を越えた取り組みも求められる。実際、サステイナビリティーに関連する興味深い連携が目立ち始め、広がりを見せている。
〈環境負荷「見える化」へ/尾州で持続可能なモノ作り/東亜紡織〉
東亜紡織は、染色大手のソトーをはじめ、尾州産地の染色・織布工場との連携を強化し、持続可能なモノ作りの実現に向け、「グリーンウールバリューチェーン」(GW)の本格運用を進めている。製造工程ごとのCO2排出量や水使用量、排水処理といった環境負荷の可視化に取り組む。
2022年から始動したこの取り組みでは、ケケン試験認証センターが第三者機関として監査・評価を支援。協業する各社とともに環境負荷インデックスを作成し、持続可能なサプライチェーン構築を目指してきた。
一定の基準を満たした製品に「ウール」「オーガニックウール」「リサイクル化学繊維」「節水型生産」「尾西特水・排水浄化処理」の5種類の環境ラベルを作成。ウールやオーガニックウールでは生分解性を訴求できる。リサイクル化学繊維では反毛を活用するなどで、ゼロエミッションに近付けるモノ作りをアピールできる。
尾西特水とは、染色や整理加工、紡績など繊維工場まで伸びる排水処理システム。下水処理場と工場を結ぶ専用の下水管を配置した工業用水の処理場の活用を示す。尾西特水は全国でもまれで、河川の環境衛生を保つために厳しい基準の元で水質管理が行われている。
ラベルによって製品が環境にどのように配慮されているかを消費者に分かりやすく伝え、持続可能なモノ作りの認知度と付加価値の向上を図る。
今後、GHG排出量の「スコープ1―2」の削減に注力するとともに、原材料調達や製品使用後までを含む「スコープ3」のデータも収集。学生服や紳士服チェーンなどアパレル企業とも連携を深めながら、環境貢献型のビジネスモデルの確立と情報発信にも力を入れる。
〈社会活動のハブに/企業、自治体、学校をつなぐ/TC―Net〉
繊維製品のリユース・リサイクル促進と循環型ビジネスモデル構築に取り組む一般社団法人、テキスタイルサーキュラーネットワーク(TC―Net、大阪府泉大津市)は、企業と自治体、学校などをつなぎ、社会活動のハブとなることを目指している。
大津毛織、中古衣料品リユース・リサイクル事業のファイバーシーディーエム(F.CDM)、日本通運、帝人フロンティア、上田安子服飾専門学校、社会福祉法人泉大津みなと会、協同組合関西ファッション連合(KanFA)、フランス屋本部、エー・ディー(東京都中央区)が参画している。
繊維to繊維リサイクルのボトルネックとなるのが使用済み繊維製品の回収と分別。TC―Netは現在、東京都葛飾区、埼玉県和光市と提携協定を結び自治体施設や環境関連イベントで回収ボックスを設置する取り組みを進めている。大学との連携にも取り組む。関西の大学関係者がリサイクルの啓発を目的に結成した「エンウィクル」とも連携し、9月にはイベントを開催する。
F.CDMが参加していることで分別工程を担えるのがTC―Netの強み。また、社会福祉法人が参画することで障害者作業施設(就労継続支援B型事業所)に異物除去作業などを依頼し、障害者の雇用創出にも貢献している。
〈認定PJに広がり/制服回収や草木染など/エシカルファッション協議会〉
繊維・アパレル業界からエシカル経済をけん引することを目的に活動するエシカルファッション協議会(岡山市)は、会員企業が進めるエシカルな取り組みである「認定プロジェクト(PJ)」を広げている。
会員企業のコトセン(岡山県倉敷市)や大木工藝(滋賀県大津市)などが取り組むのが、使用済みユニフォームを炭化させて新製品に生まれ変わらせるPJ。コトセンがユニフォームを供給する、LPガス事業などを手掛ける永燃(岡山市)から廃棄予定のユニフォームを回収し、まとまった量が集まった後、大木工藝で炭化。この炭の有効活用を図る。
同じく会員企業のニッセンファクトリー(倉敷市)が関わるのは、ウェブ制作・開発事業などを手掛けるクラビズ(同)が展開する肌着ブランド「くらしきぬ」との協業商品だ。
くらしきぬの定番肌着「はらぱん」に、安心、安全な加工ブランド「倉敷染」の認定工場であるニッセンファクトリーが草木染による加工を施す。取り組みがスタートした昨年以降、ヒノキの皮、桃とシャインマスカットの剪定(せんてい)枝で染めた商品を打ち出している。
情報発信も強めている。昨年、会員企業の手掛けるエシカルファッション商品を紹介するプラットフォーム「エシカルなとっておき。」を設置。定期的に商品情報を紹介している。
先月下旬に岡山市内で第3期総会を開いた。前年度(2024年4月~25年3月)の事業の報告を行ったほか、今年度の事業計画案などについて協議。8月に岡山コンベンションセンター(岡山市)で開かれる「おかやまSDGsフェア2025」に参加しPRするほか、各認証団体との提携なども計画している。
同協議会は22年の設立。現在、会員数は正会員28社、賛助会員9社、特別会員3社の計40社。