特集 商社OEM2025/果たすべき役割を追求/迫られる変化への対応/豊島/蝶理

2025年06月27日 (金曜日)

 アパレル商社のOEM/ODM事業を取り巻く環境は激しい変化にさらされている。現在はトランプ・ショックのマイナス影響に対する懸念が募る中、多岐にわたる素材調達や複雑な生産背景の構築をどう実践していくのか。各商社は時代の変化への対応に迫られている。

 2024年の旧三菱商事ファッション(MCF)を巡る動きは、OEM/ODMを担う商社の再編を予期させるほどのインパクトをもたらした。

 同年5月に良品計画が、同社を販売先とするMCFの衣料品製造販売事業に関して保有する権利義務を承継した。良品計画が無印良品などの衣料品事業を内製化する方針に基づく施策だった。

 11月には、ワールドがMCFの全株式を取得し子会社化すると発表。25年2月に譲渡を実行した。MCFは「エムシーファッション」に社名変更し、再スタートを切った。

 商社によるOEM/ODMの在り方が根本から問われる状況下で、各商社は海外事業の再構築に乗り出している。

 MNインターファッションは、ベトナムとインドネシアで生地や製品の内販を行っており、この領域での取引の拡大を目指す。

 田村駒は、バングラデシュに主要拠点を置いているが、政変の影響で生産が打撃を受けるリスクを抱える。ミャンマー、カンボジア、ベトナムなどの生産背景も活用し、バランスのとれた生産体制の整備を進めている。

〈AI活用で企画意図明確化/営業の要望を反映したソフトで/豊島〉

 豊島はライフスタイル提案におけるプロダクト開発で、人工知能(AI)の活用を通して企画意図やデザイン、仕様などの意思決定を迅速に具現化する。営業社員の要望を吸い上げながらデザイン企画室がソフトウエアの開発を進める。

 なかでも活用が進むのが、柄を生成AIで制作するサービス「バーチャルスタンダード・AIパターン」だ。「柔らかい」「鮮やかな」といった好みの37のキーワードと「ふつう」「やや」「とても」の3段階で連想する感覚の程度を選択。それらを組み合わせると瞬時に柄が完成する。

 生成AIで3次元のモデルに着装させるシステム「ファブリックジーニー」も活用が進む。デザイン、生地、色・柄、モデルを順に選択し、人の感性と元になる柄の情報を組み合わせ、大量のパターンに上る柄を制作する。

 これらを生かしつつ素材や製品を視覚的に表現することが、生地・製品見本の制作にかかるマンパワーや工数の減少、環境負荷の低減につながる。例として、新しいデザインを企画する場合、生成AIシステムを生かして具体的な製品・デザイン・仕様の決定を支援。この情報を製販双方で共有することで、生産から製品化への“共通言語”となる。

 デザイン企画室の加藤諭課長は「製販双方を俯瞰(ふかん)的に見てシステムの構築を進めている」と話す。システムソフトウエアを扱う企業との協業も進む。例として、格子柄生地を糸の種類や番手、配列を忠実に3Dで再現する取り組みも具体化している。

〈ニットの生産背景を紹介/きめ細かなニーズ対応訴求/蝶理〉

 蝶理は、ニット製品の生産背景を分かりやすく伝えるため、「ニットジャーニー」と称し、産地を巡る趣向で生産の内容を紹介する。

 「ASEAN+1」として、ベトナム、カンボジア、バングラデシュの各国で築いたスキームを説明する。

 ベトナムスキームでは、ASEAN地域では希少な18ゲージ対応も可能とする。グループ会社であるSTXがベトナムで築いた生産背景を活用する〝高度なニットの共創〟もアピールする。

 カンボジアスキームは、中国・天津の拠点で16ゲージの編み立てを行い、カンボジアでリンキングと仕上げをした上で、日本で関税ゼロ製品として輸入するという流れを構築している。

 バングラデシュスキームは、16ゲージまでを対応可能な範囲とする。高品質な素材を投入し、コストメリットを最大化する施策も取っている。

 「ディープチャイナ」のエリアで打ち出す「青島プロジェクト」は、乳山拠点の「ファンタイ」と威海拠点を中心に、高品質とコスト優位性が両立する生産背景の活用を提案する。

 「スピナーネットワーク」では、糸の価格の安定と競争力の根拠となる大手スピナーとの契約状況を紹介している。合繊、天然素材、梳毛、セミ梳毛のそれぞれで大手と年間契約を締結している事実を示し、顧客との関係強化を図る。

 こうしてニットの生産背景を紹介しながら、織物についてもベトナムの生産対応能力を発信する。STXが運営する「SGS」やアンフングループのヴェストン工場などを活用し、幅広い縫製ニーズに応えていく。