東レの長繊維事業 原糸輸出にも勝機
2025年06月30日 (月曜日)
東レの長繊維事業部は、グループ内のテキスタイル事業との連携を一段と強めることで中長期的な開発と国内工場の安定稼働を両立することに取り組む。また、原糸輸出にも力を入れることで長繊維事業の業容の維持・拡大を目指す。
5月に就任した村田圭資長繊維事業部長は現在の長繊維事業の課題として「国内での汎用(はんよう)糸需要の減退が続いていることで、国内工場の稼働維持が厳しくなっている」ことを挙げる。ナイロン長繊維は愛知工場(名古屋市西区)と石川工場(石川県能美市)、ポリエステル長繊維は三島工場(静岡県三島市)と石川工場で生産しているが、根強い需要がある特殊糸の生産スペースがタイトとなる一方、汎用糸の需要が減退したことで安定稼働を維持するための環境が一段と難しくなっている。
このためテキスタイル事業の連携を一段と強める。長繊維事業はテキスタイル事業への原糸供給を担っており、現在はファイバー事業とテキスタイル事業の担当者による定期的な開発会議を実施している。「そこで中長期的な開発だけでなく、工場の安定稼働につながる短期的な開発提案にも力を入れる」との考えだ。
また、原糸輸出の拡大にも力を入れる。ナイロン長繊維を中心に「中国のテキスタイルメーカーが日本の糸を買うケースが増えてきた。特に複合紡糸や特殊ポリマー使い、極細繊度糸には勝機がある」と指摘。中国子会社の東麗合成繊維〈南通〉(TFNL)とも連携を進め、中国での糸加工にも取り組むことで日本からの原糸輸出拡大を目指す。
そのほか、合繊長繊維の市場拡大のために「他素材代替のための開発に力を入れる」。合繊はこれまで主に複合加工糸によってウールや綿など天然繊維の代替に成功し、需要を拡大してきた。今後は再生セルロース繊維などを代替する素材開発にも力を入れ、婦人・紳士アウター用途などでも需要掘り起こしに取り組む考えだ。