特集 25秋冬オフィス・サービスウエア(7)/素材メーカー編/機能と環境配慮の両立/東レ/ニッケ

2025年07月01日 (火曜日)

 オフィス、サービスウエアに求められる優雅さ、上品さ。年々進化する快適な着用感を支えているのは素材が持つさまざまな機能性だ。今秋冬でも注目素材が多数採用されている。サステイナビリティーの取り組みとともに紹介する。

〈“合わせ技”で需要捉える/広がる「ライトフィックス」/東レ〉

 東レは、中国・ASEAN地域の拠点を通じて、日本のユニフォームメーカーが活用する縫製工場への生地供給を強化している。一方、国内では合繊クラスターと連携する北陸産地の技術力を生かした開発を促進。産地の後加工技術と東レ独自の複合紡糸技術「ナノデザイン」などを組み合わせた“合わせ技”によって商品の高度化を図る。

 そのような商品の高度化の中で、販売を堅調に伸ばすのが、高捲縮(けんしゅく)糸を活用した軽量ストレッチ素材「ライトフィックス」。快適な着心地と動きやすさから、これまでワークウエア向けを中心に展開してきたが、近年はオフィスやサービスウエア用途への採用が広がっている。

 昨年には、高捲縮糸とほかの差別化糸を組み合わせ、織組織の工夫を加えた多層構造の「ライトフィックスD」を開発。凹凸感のある構造により、春夏素材に求められる肌離れ性、吸汗速乾性、高通気性、ボリューム感といったさまざまな機能を付与できる点が特徴となっている。また、フラットで高密度な多層織組織も対応可能で、コンパクトな質感と軽量性の両立も実現した。

 気候変動による暑熱対策需要の高まりを受け、同社では電動ファン(EF)付きウエア向けのベース素材や、接触冷感・通気性・吸汗速乾性に優れた夏用素材の開発も活発化。吸汗速乾と汗染み防止の「ソリテクト」、麻調の高通気「シャミラン」、防透け性に優れた「スプリンジー」などの拡販に取り組む。

 さらに近年の「男女ペアのセットアップ企画」「快適性重視」の市場トレンドに対応し、ポリエステル・レーヨン混から合繊100%素材への置き換え需要を捉える。ストレッチ性・通気性に優れたニット調織物など開発を進め、素材の高度化で新たなニーズに応える。

〈環境配慮でニーズ深掘り/暑熱対策製品も投入/ニッケ〉

 ニッケのビジネスユニフォーム部門は、ウールの特性を生かした機能素材に根強い人気があるとして、対象業種に合わせた製品開発で裾野拡大を図る。中でも注目の新素材は、環境配慮型革新紡績糸「ブリーザ」に植物由来ポリエステルを使用した「バイオブリーザ」と、通気度230立方センチ/毎平方センチ・秒の暑熱対策用生地「クールツイスト」だ。

 バイオブリーザは、ウールと植物由来ポリエステルを独自のサイクロンスピン製法で紡績。回転気流により繊維を均一に絡ませ、耐摩耗とストレッチ性に優れ、毛玉、型崩れを抑える。深い色味とクリアな表面感も特徴。製造時のCO2排出とマイクロプラスチック放出削減につながり、企業のサステイナビリティー活動に対するニーズに応える。

 暑熱対策が各業界で求められる中、当初警察のシャツ用生地として開発されたのがクールツイスト。「裸より涼しい」という圧倒的な通気性があり、現在は他業種も含めて訴求を強化している。透け防止タイプもラインアップする。

 昨年始動したウール製品の資源循環プロジェクト「ワヲナス」にも注目したい。ビジネスユニフォーム分野では、ウールとポリエステルの混紡素材を使った衣料を回収。原料の状態に戻した後、再び梳毛糸にして服を作り出す完全水平リサイクルとなる。同社では学生服、その他一般衣料を含め、2030年までに再生ウール繊維を使用した製品を10万着販売することを目指している。

 現在、プロジェクトに賛同したエンドユーザー企業数社との連携を模索中。東京支社(8月下旬に移転予定)内にはワヲナスの取り組みやサンプル製品を並べたショールームを開設している。

〈LU協 ベストドレッサーカンパニー賞/武蔵境自動車教習所が金賞〉

 オフィスウエアメーカー10社が加盟するレディースユニフォーム協議会(LU協)はこのほど、「第9回ベストドレッサーカンパニー賞」の結果を発表した。金賞は武蔵境自動車教習所(東京都武蔵野市)の制服が受賞。銀賞はネッツトヨタ南国(高知市)、銅賞にマツシマホールディングス(京都市)の制服がそれぞれ選ばれた。賞状と共に賞金として金賞10万円、銀賞5万円、銅賞3万円が贈られた。

 今回は、オフィス、接客ユニフォームをリニューアルした20の企業・団体がエントリー。2月にウェブ上で投票を受け付けた。

 金賞を受賞した武蔵境自動車教習所の制服素材は、主張し過ぎないヘリンボーン柄をベースに凸凹感のある糸や程よくラメを入れた糸が高級感を醸し出す。ジャケットデザインはグレード感を演出。ワンピースは華やかな印象のアシンメトリー襟を採用した。同社では「一人一人の個性と魅力を引き出し認め合うためにパンツ、スカート、ワンピースを選べるようにし、カラーも白と黒の両方を支給することで感性を生かせるようにした」とコメントしている。制服製作はジョア(岡山市)が担った。

 銀賞のネッツトヨタ南国は受賞に対して「制服とは自身の仕事を体現する大切なツールであり、周りから見て評価いただくことがとても仕事の励みにつながる」とコメントを寄せた。製作はチクマ(大阪市中央区)。

 銅賞のマツシマホールディングスは「こだわりを形にすることができ、課題であった機能性も格段にアップし、社員のモチベーションアップにもつながり非常に良かった」とした。カーシーカシマ(栃木県佐野市)が製作している。