繊維ニュース

注目の夏商材 記録的な猛暑で動く

2025年07月04日 (金曜日)

 西日本では史上最速の梅雨明けとなり、記録的な猛暑が続く中、各社で熱中症対策や快適性を重視した夏商材の販売が加速している。

 冷感機能や通気性、軽量性を備えた繊維製品が既に売れ筋となっており、今後のさらなる需要拡大が見込まれる。

 高知市のオーガニック繊維製品メーカーのハートでは、自社ブランド「サフォ」の直営店(東京都渋谷区)において、6月から夏物の販売が本格化。山岡弘章社長は「夏は1年の半分続くと見込み、MDを拡充している」と語る。主力はリネン混オーガニックガーゼケットで、シャリ感と清涼感が好評だ。3年前に投入した本麻ダウンケットも、適度な重みと吸湿性が評価され、冷房対策商品として定着。いずれも自宅で洗濯・乾燥できる利便性が支持を集める。

 熱中症対策グッズでは、ナストーコーポレーション(大阪府箕面市)の「クールタオル」が法人向け需要を中心に拡大。2019年の発売以降、累計販売枚数は658万枚に達し、25年は5月から6月下旬の間に18・3万枚を出荷。うち10万枚以上が建設・運送業などの企業による別注品で、社員向けの配布需要が堅調に推移している。実用新案も取得しており、「品質・機能性で選んでもらっている」(橘田知孝常務商品本部長)と言う。

 素材開発の動きも活発だ。東洋紡せんいは、接触冷感素材「ツヌーガ」関連製品の売り上げが24春夏比で50%増加。糸・生地・製品の3軸展開に加え、25春夏からは海外への糸販売も本格化し、グローバル対応を強化している。敷パッドやキルトケットなど寝具への採用も進んでおり、今後は消臭・吸湿・除菌機能を備えた高機能素材の提案にも注力する。

 教育分野では、菅公学生服の研究機関「カンコー学生工学研究所」が農業高校向けに電動ファン(EF)付きウエアの販売を開始した。温度管理の難しい実習現場での使用を想定し、岡山県立の2校が導入。生徒の熱中症予防と学習機会の確保の両立を図る。

 クラボウは、暑熱リスクおよび体調管理システム「スマートフィット」の販売に力を入れている。前期(25年3月期)は、スマートフォン不要の端末やデータの可視化レポートの導入が進み、大手企業を含む採用が拡大。売り上げは前年の3倍以上に伸長した。6月から熱中症対策が罰則付きで義務化された影響で、昨年はあまりなかった問い合わせが「毎日2、3件ほど寄せられている」(繊維事業部の絹本良和ユニフォーム部長)。今年は試験的な採用が多いが、来年以降の受注拡大に期待がかかる。

 夏の長期化と企業の従業員に対する労働安全への意識の高まりが、暑熱対策に有効な商品の需要を後押ししている。もはや個人の選択肢を超え、社会全体の“備え”としての広がりを見せる。