生地輸出連載 悲願達成に向けて⑬/ZERO―TEX 取締役営業部長 大倉伸治氏

2025年07月08日 (火曜日)

製品ありきのディレクション

――2023年8月にカイタックグループ入りし、ストレスゼロの快適性と環境負荷ゼロの持続可能性を備えた生地を展開するZERO―TEX(ゼロテックス)の輸出事業の現状は。

 米国の医療用ガウンや大手カジュアルブランドで採用が決まるなど、海外で認知度を高めてきました。しかし、継続的な受注獲得には至らず、海外で開かれる展示会への出展を通じて改めて、輸出拡大を目指しています。

 カイタックグループの傘下に入って初めて出展した、3月の「インターテキスタイル上海アパレルファブリックス2025春夏」(インテキ上海)では、日本館ではなく、中国機能性素材区域にあえてブースを出しました。大手アウトドアアパレルを含む、50社を超える欧米や中国の企業と連絡先を交換して、現在は個別の商談を進めています。9月のインテキ上海にも出展するほか、年4回ほど海外展への出展を計画しています。

――輸出拡大に向けた戦略は。

 製品ありきの素材ディレクションが可能な利点を訴求します。生地だけを展示したとしても、どう“料理”すればよいか分からないアパレルも少なくありません。製品で展示することで、素材の良さをより分かりやすく伝えることができます。生地だけではなく、製品に組み立てて供給することも可能です。

 今後は、さまざまなアパレルとの協業も進めていきます。協業先ブランドとゼロテックスのWネームを冠した商品も展開できる予定です。

――生地事業の強みは。

 欧州へ進出する上で必須となる「持続可能性の高さ」が強みです。「エコテックスメードイングリーン」の認定を受ける東レマレーシア工場で主力商品を生産することに加え、カイタックグループが推し進める「ムダゼロプロジェクト」で再生した糸と合わせた付加価値の向上も図っています。

――拡大を目指す国や地域は。

 カイタックグループが持つネットワークを生かして販路を広げます。ベトナムの現地法人を通じて、タイやインド、中東での販売を拡大させるほか、欧州に販路を持つ中国の貿易会社とパートナーシップを組むことも検討しています。

 一方で米国は、トランプ関税による懸念などもあり現在は開拓を一時休止しています。また改めて、ロサンゼルスの現地法人などを活用した開拓を進めたいと思います。

(毎週月、火曜日に掲載)