繊維ニュース

クラレ 収益重視の繊維事業

2025年07月09日 (水曜日)

 クラレは、収益性を軸に繊維事業を展開する。川原仁社長は、伸長が期待できる産業資材分野も「一定の収益を保つことが重要」とし、投下資本効率に目を向ける考えを示した。

 成長が見込める製品には投資も実施し、液晶ポリマー繊維「ベクトラン」の増強は計画通りに進める。

 同社は昨年に不織布事業の再編、今年6月にはポリエステル長繊維および樹脂の生産撤退を発表した。ポリエステル長繊維などは、既にグループのクラレトレーディングの縫製品や差別化品に絞ったビジネスに移行しており、この先何年間も生産を続けるのは難しいと判断した。

 川原社長は「クラレトレーディングの縫製品ビジネスはしっかりと収益を保ちながら展開できている」とし、「原料を外部調達しながらでも同社のノウハウが生かせる」と話した。子会社であるクラレ西条でのポリエステル長繊維生産を予定通り2026年12月末で終了する。

 クラレ本体に残る繊維事業では産業資材分野が中心になる。その中でポリビニルアルコール(PVA)繊維「クラロン」「クラロンK―Ⅱ」やベクトラン、人工皮革「クラリーノ」、面ファスナー「マジックテープ」、メルトブロー不織布の伸長に期待をかける。

 中でも成長と用途開拓の可能性があるとするベクトランについては25年度(12月期)下半期には生産能力を20%増強する。会社の方針ではなく、個人的な考えとしつつ「もう1段階、2段階拡大したいと思っている」とした。クラリーノは、カーシートをはじめ用途に広がりを見せる。

 クラレ全体のけん引役はビニルアセテートや活性炭が務める。ビニルアセテートは、強固なサプライチェーンとグローバル展開による収益獲得力に期待する。活性炭はPFAS(有機フッ素化合物)規制などから需要が世界的に拡大するとみている。