技術の眼/中津山熱処理/ミズノとカネカ/帝人フロンティア/米マイクロバン/ダイヤ工業/ワコール

2025年07月11日 (金曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こし得る重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈中津山熱処理/バンブーレーヨンを炭素化〉

 金属の熱処理加工を行う中津山熱処理(新潟県長岡市)は、バンブーレーヨン使いの生地を真空焼成した炭素繊維シートの本格販売を始める。電磁波遮蔽(しゃへい)や導電性などの機能を持ち、衣類やインテリアなど幅広い用途で使える。縫製会社などと連携し、製品での納入にも応じる。

 真空での熱処理は、酸化膜の発生がなく、空気を用いる大気炉での熱処理と比べてゆがみ(変形・変寸)が少ないため、精緻性が求められる半導体や精密機器用の金型製造などに用いられている。この技術と改造を施した専用設備の導入によって繊維(生地)への応用を可能にした。

 バンブーレーヨン100%の生地を真空焼成して繊維を炭化する。バンブーレーヨンに限定するのは、焼成後も一定の強度が保てるためだ。素材は絞り込むが、織物、ニット、フェルトなど生地の種類は問わない。通気性や伸縮性など、元の生地が持っている特性は維持する。

〈ミズノとカネカ/海に優しい生分解性人工芝〉

 ミズノとカネカは、海洋環境に配慮した屋内スポーツ用人工芝と充填(じゅうてん)材を開発したと発表した。2025年中の販売に向け、全国のスポーツ施設や商業施設などへ導入を提案する。

 現行の人工芝と充填材のほとんどは石油由来の樹脂を使用しており、衣類や靴に付着した人工芝葉と充填材が河川などを経て海に流出することで、海洋生態系に悪影響を与えるマイクロプラスチックになることが問題になっている。このほど両社が開発した人工芝と充填材は土壌でも海中でも容易にCO2と水に生分解されるため、海洋汚染問題の解決に貢献する。

 カネカの100%バイオマス由来ポリマー「グリーンプラネット」を使った人工芝と充填材は「海洋プラスチックごみ対策」「CO2排出量削減」「石油資源の使用量削減」「原材料の調達から製造まで全て国産」という特徴がある。

〈帝人フロンティア/非PUで軽量ストレッチ〉

 帝人フロンティアは、ポリウレタン(PU)弾性糸を使わない新感覚の軽量ストレッチ編み地「ソロテックスデライト」を開発した。

 新たに開発したストレッチ原糸とランダム芯鞘型混繊技術を組み合わせることで軽量性や通気性に加えてエアリーな質感とソフトな風合い、ナチュラルな凹凸外観を実現した。26秋冬向けからスポーツ素材として販売を開始する。

 細繊度でありながら強力なクリンプ構造を持つことで優れたストレッチ性も持つPTTコンジュゲート原糸を開発。新原糸を芯、鞘にハイマルチのポリエステル糸を配置するランダム芯鞘型混繊技術を組み合わせ、これを高密度・高バランス編組することで繊維表面がナチュラルな微細立体構造となる。これによりPU非使用による軽量性と高通気性に加え、エアリーな質感と高品位、ソフトな肌触りを併せ持つソロテックスデライトが完成した。

〈米マイクロバン/PFAS不使用の撥水加工〉

 抗菌技術を手掛ける米マイクロバン・インターナショナルはこのほど、有機フッ素化合物(PFAS)を使用しない繊維向け撥水(はっすい)加工「H2Oシールド」を発表した。

 同加工は、従来多用されてきたPFASやPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)を含まず、水のはじき性能と耐久性を両立した仕上げ技術。家庭洗濯20回後でも高い撥水性能を維持する。

 用途に応じて4種類の処方を用意し、シャワーカーテンやテント、スポーツウエア、アウトドア製品など多様な繊維製品に対応。縫い目の裂けや色移りなど、従来課題とされていた性能面にも対応した。さらに前処理剤「WR-P」も用意し、薬剤使用量を最大20%削減できる。

 製造工程では一般的なパッド法や排出プロセスに対応しており、既存設備への導入も容易。抗菌・防臭加工と組み合わせた多機能素材開発も視野に入れる。

〈ダイヤ工業/船舶でのロープ引っ張りを補助〉

 サポーターなどの医療用品製造のダイヤ工業(岡山市)はこのほど、船舶におけるロープの引っ張り動作を補助するアシストスーツ(AS)を海上保安庁(海保)と共同で開発した。

 海保では巡視船艇の乗組員が落水者の救助や漂流物の引き揚げなどの業務に従事する。中でも、離岸時に海中から重り付きのロープを引き上げる作業は2人体制で行う負荷の大きい業務の一つ。引っ張る動作に適しているASが市場に少ない中、共同開発に至った。

 ASは滑り止め手袋と、それをつなぐ腕ベルト、アシストベルトから構成される。手袋は摩擦力の強い素材を採用し、指と指の間はクッション性の高い素材を取り入れた。腕ベルトから伝わる引っ張る力を分散し、食い込みを抑える。引っ張る力が骨盤周辺にダイレクトに伝わるため、腕ベルトは非伸縮素材を使用。アシストベルトも骨盤部に固定するため、前面と背面、補助ベルトに非伸縮素材を使った。

〈ワコール/3D計測で新たにバランス診断〉

 ワコールは、3D計測サービス「スキャンビー」の機能に「からだバランス診断」を追加した。3Dスキャンで得たデータから体の状態を分析し、スマホ首や猫背などの姿勢レベルを判定する。

 スキャンビーは、3Dボディースキャナーを使用してセルフで体を計測できるサービス。3秒のスキャンで360度から体を見ることができる3D映像や全身20カ所の採寸データが得られ、インナーウエアのサイズも分かる。有料サービスの骨格診断も展開し、体験者数は延べ30万人を突破(2025年5月末時点)している。新サービスのからだバランス診断は、左右の傾きが大きく背中が丸い「おつかれネコタイプ」、肩や背中が丸く首が前に出ている「脱力パンダタイプ」など、動物をモチーフにした6タイプに分類。スマホ首、猫背、巻き肩、反り腰といった姿勢レベルを6段階で診断する。診断後には、その場で体を動かしてバランスを整えるポイントが分かるバランスチャレンジを体験でき、再スキャンでデータを比較することが可能。