特集 今治タオル産地(5)/ニュースファイル/産地の話題

2025年07月16日 (水曜日)

〈今治タオル工組/課題解決へ講習会など充実〉

 今治タオル工業組合(愛媛県今治市)のイノベーションワーキンググループはこのほど、「生産性向上に係る勉強会」を同工組内で開催した。講師には、海外製ワインダーの国内販売代理店であるワインダーワークス(大阪市中央区)の米田卓矢社長を招いた。

 同産地では、サプライチェーン内で小規模なワインダー業者が、ジャカード織りをはじめとする多様なモノ作りを支えてきた。これら業者は、必要に応じた柔軟な糸の巻き替え作業を担ってきたが、近年は作業従事者の高齢化などにより減少傾向にある。

 一方で、受注の小ロット化やサンプル製造などで巻き替え需要は依然として多く、タオルメーカーや染色加工業では、ワインダー工程の内製化を検討する動きが広がっている。

 今回の勉強会では、ワインダーワークスが取り扱うスイス・SSM社製の最新型ワインダーについて紹介。導入によってどのような生産効率の改善が見込めるかを解説した。

 例えば、1台で糸染色工程向けのソフト巻きや、大きな糸巻から小さな糸巻に分割する「小割り」など幅広い用途に対応でき、操作も簡便であることを強調した。

 さらに、糸へのワックス処理が機器で可能なほか、湿度や糸の特性が異なる環境でも安定した張力で巻き取ることができ、糸切れや不良の発生を抑え、製織品質の安定につながるとした。説明には動画や資料も用いられた。

 今治タオル工業組合では、今後も組合傘下企業の課題に対応した勉強会やセミナーを随時開催し、産地サプライチェーンの維持・強靱(きょうじん)化に向けた取り組みを続ける。

〈シキボウ/国内外拠点生かし市場深耕〉

 シキボウは、国内外の生産拠点を生かした柔軟な対応力を強みに、タオル用途への差別化糸の拡販に力を入れている。シキボウベトナムでの備蓄糸や、グループの新内外綿の素材を組み合わせることで、提案の幅を広げる。

 最近は綿100%にこだわらない機能性と風合いを重視した糸への需要が高まりを見せる。鞘に綿、芯にポリエステル短繊維を配した吸水速乾糸「クイックドライコットン」の採用が広がるほか、特殊紡績法による絶妙な毛羽コントロール糸「ふわポップ」への関心も高まりつつある。

 原料にこだわり、上質な風合いや光沢感が特徴の精紡交撚糸「デュアルシリーズ」では、普通撚りが堅調に販売を伸ばす。甘撚りタイプの「デュアルロマン」20、30番手の引き合いも増加傾向にある。

 新内外綿が手掛ける魚の鱗(うろこ)由来のコラーゲンを練り込んだレーヨン糸「フィラゲン」をはじめ、天然の抗菌効果を備える竹や葦(ヨシ)の糸など、多彩な機能糸もタオルメーカーから注目を集める。

 このほか、杢(もく)糸「モクティ」や、天然色素を使った「ボタニカルダイ」などの染め糸もタオル用途へ提案を図り、綿100%にはない風合いや機能性によって、タオル産地で沸き上がる新たなニーズを捉える。

〈今治タオル青年部会長 藤髙 亮 氏/内外での交流を深める〉

――就任しての意気込みを。

 2024年は繊維業界、今治産地ともに厳しい年になりました。なじみのある素材メーカーが相次いで撤退を決めるなど、状況の厳しさがより明確になってきました。

 当産地のタオルメーカーにおいても加工料金や輸送料金、最低賃金の上昇が続く中での労働力確保など負担は明らかに増えています。

 青年部会メンバーの協力を得ながら、この難局を打開するための糸口を、青年部会の皆さんとともに見いだしていきたいと思います。

――今期の活動は。

 前期の矢野秀和青年部会長(矢野紋織専務)が進めた、メンバー間の「人となりを知る」取り組みによって当部会の結束はより強まりました。

 青年部会はタオルメーカーだけでなく、染色加工業、糸商、包装資材など産地内のサプライチェーンに関わる幅広い業種のメンバーで構成されています。それぞれのメンバーが定例会や勉強会などを通じて意見交換を行うなど、交流を深めています。

 今期はさらに青年部会の枠を超えて、幅広く交流を深めて行こうと考えています。

――具体的な活動内容は。

 広報委員会を中心にSNSを活用し、青年部会の活動内容を広く発信していきます。さらにSNSの使い方を学び、各企業での活用も広げてもらえればと考えています。

 さらに総務委員会では、恒例となっている産地外への研修旅行を行います。今年は大阪周辺での研修を予定しており、ここでも大阪タオル工業組合の青年部会との交流が主な目的となっています。

 社会全体に言えることですが、大きな変化が短期間で起きています。青年部会の中でも「今治タオル」ブランドが成立し、現在に至るまでを知らない世代も参加してきています。各世代の橋渡し役となり、過去の経験や若い世代の視点を共有する機会を増やしたいと考えています。

 企画委員会が中心となって産地の先輩や外部から講師を招いての講演会や勉強会も充実させます。

 参加することで学びが得られる、見識を深められる取り組みを提供します。

――カラー見本帳を作成しました。

 昨年から取り組みを進め「イマバリ・カラーコレクション」として完成しました。今年5月から青年部会会員が所属する企業を中心に配布しています。

 サプライチェーンの中で、色の認識の違いはサンプルの取り直しなど、細かなロスを生む原因となります。見本帳の普及が、これらの解消につながることを期待しています。