東レ スポーツ・衣料資材事業部/原糸・原綿の開発力生かす/黄変抑制ナイロンなど新投入

2025年07月17日 (木曜日)

 東レは、原糸・原綿からの開発という強みを生かし、スポーツ・アウトドア分野を深耕する。スポーツ・衣料資材事業部が新たに打ち出す黄変抑制ナイロンと綿調ポリエステルも、ポリマーに工夫を施して機能を発現した。「東レならでは」の素材投入によって販売拡大を図っていく。

 一般的なナイロンは、太陽光や窒素酸化物(NOxガス)などの影響を受けて黄変する。後加工による黄変抑制タイプもあるが、黄変しにくさを示す級数は0・5~1の上昇にとどまるとされる。スポーツ・アウトドア分野では欠かせないナイロンだが、白色が使いにくいのが実情だった。

 同社が新開発した「澄白」は、ポリマーに工夫を施したナイロンと特殊加工を組み合わせて機能を付与した。黄変発生の程度を評価するイエローイング試験では、通常のナイロンが2級であるのに対し、4級(20洗後)を実現した。長期保管でも黄変しにくいと言う。

 ナイロンのしなやかさや軽量感、摩擦に強いといった特性は維持する。また、移行昇華(色移り)が起こりにくいという特性もあり、白と黒などの能力を組み合わせることができる。「国内で需要が復活、中国で市場が拡大している」というスキー分野のほか、ランニング分野に提案する。

 同じく新開発の「フィールコット」は、ポリエステルステープルの紡績糸を使ったコットン調高物性生地。ポリエステルステープルを使った生地はピリングの発生が課題になるが、「紡績手法ではなく、ポリマーの工夫で解決した」と言う。

 ピリング耐久性は、綿と同等の4級を誇り、摩擦による耐久性を評価するマーチンデール試験では4万回をクリアする。コットンのような柔らかさと質感を持ちつつ、ポリエステル特有の速乾性やイージーケア性を兼ね備える。Tシャツやスエットなどスポーツカジュアルなどに提案する。

 遮熱性や防透性などを持つ「ボディシェルEX」は、複合紡糸技術「ナノデザイン」を応用している。酸化チタンを用いて機能を付与するが、通常では酸化チタンは4%程度しか含有できない。同素材は、10%以上を可能にした。ゴルフ分野のほか、ビジネスシャツなどでも採用されている。

 PFAS(有機フッ素化合物)フリーで高い水滴除去性を実現した撥水(はっすい)ストレッチ織・編み物「デューエイト」もナノデザインを応用している。そのほか、原糸・原綿に限らず、防水透湿の「ダーミザクス」、軽量保温の「カルイシ」などの高機能素材を広くそろえている。