A+A 深化する労働安全市場(前) /メッセ・デュッセルドルフA+A統括部長 ラース・ヴィスマー氏 、メッセ・デュッセルドルフ・ジャパン社長 小原暁子氏

2025年07月22日 (火曜日)

“一歩先を行く”が日本の強み

 6月から罰則付きの熱中症対策義務化が始まるなど、日本では労働安全に対する意識が高まりつつある。今年11月4~7日にドイツで世界最大級の労働安全衛生見本市「A+A 国際労働安全衛生展」が開かれる。その日本版とも言うべき「はたらく現場の環境展」(JIOSH+W)が今月16~19日にインテックス大阪で初めて開かれた。改めて、主催者であるメッセ・デュッセルドルフの担当者2人に、A+AとJIOSH+Wの方向性と展望を聞いた。

――日本版「A+A」として「JIOSH+W」が日本初開催となりました。

 小原氏(以下敬称略) 労働安全をテーマにした展示会は既に日本でも幾つかありましたが、後発として何ができるかを考え抜いた末のスタートでした。私たちが掲げたのは、従来の「労働安全衛生」という枠を超えて、「経営課題」として「働く環境」を広く捉え直すというコンセプトです。

 「死なない、けがをしない」という安全確保は最優先です。しかし、人手不足が深刻化する中で、企業が成長し続けるためには、従業員が「この会社で働き続けたい」と思えるような、やりがいと誇りを持てる環境が不可欠です。私たちは、そうした魅力的な職場づくりに貢献する製品やサービスに光を当てたいと考えました。

 ヴィスマー氏(同) 初開催にもかかわらず、これだけ多くの方々にご来場いただき、感銘を受けました。特に、日本企業の製品が持つ技術力の高さとイノベーションには目を見張るものがあります。多くの国では、安全衛生製品は手袋や靴といった伝統的なものが中心ですが、日本では「課題解決」という視点から、センサー技術を応用したスマートPPE(個人保護具)や、人間工学に基づいたアシストスーツ(AS)など、一歩先を行く製品が生まれています。ここに日本企業の大きな強みと可能性があると感じています。

――11月開催のA+A2025は過去最大規模になるとのことですが、世界のトレンドについて教えてください。

 ヴィスマー 世界的な大手企業からスタートアップまで2200社を超える出展企業が集まります。そのため、スペースを1号館分増やしました。ASやスマートPPE、人工知能(AI)によるリスク分析技術、仮想現実(VR)を活用した安全教育など、最新技術や製品が披露される予定です。

 注目すべきトレンドは大きく三つあります。一つ目は、リモートワークの普及など働き方の多様化に伴う「ニューワークとエルゴノミクス」。二つ目は、CO2排出量削減やリサイクルなど「サステイナビリティーと循環型経済」。そして三つ目が、実用化フェーズに入ったASです。