生地輸出連載 悲願達成に向けて⑮/豊島 執行役員(素材担当)近藤裕幸氏

2025年07月22日 (火曜日)

国内産地との“モノ作り”強みに

――生地輸出事業の現況は。

 前期(2025年6月期)は微増収となりました。輸出の9割以上が国内産生地で、中国などアジア地域や欧米に販売しています。

 合成繊維の生地輸出が中心ですが、近年では欧州で天然繊維の日本製生地が見直される傾向にあります。綿やウールなど短繊維原料の生地も新たな商機が増えそうだと期待しています。

――中国向けが厳しいとみていた。

 中国向けは下半期(26年1月)から落ち込みました。市場の冷え込みや消費意欲の減退が影響しています。欧米向けは堅調で、中国の減少分を補完しています。

 中国やアジア向けの販売では上海現地法人(豊島国際)との連携が不可欠です。上海以外に北京・広州に展示室がありますが、新たに杭州にも設けました。電子商取引(EC)で販売を伸ばす新鋭の企業もあり、市場やトレンドが急速に変化します。情報交換の密度を高め、あらゆるニーズに対応を図ります。

――輸出事業の強みは。

 国内産地との協業を軸にしながら、単なる卸売りではなく“モノが作れる”ことが強みだと思います。原料の厳選に始まり、適切な仕様と規格に合わせたモノ作りの連携ができる点を販売面での訴求ポイントにしています。

 各工程を担う企業や染色整理企業まで、近い立ち位置で取り組むことを強く意識しています。

 中国でも豊島国際が同国内の生産拠点や企業と連携しながら“産元”の機能を発揮し“外・外”の販売が年々増加しています。

――主に協業する国内産地は。

 合繊は北陸産地を中心に協業しています。ほかにもウール生地は尾州と取り組んでおり、三備のデニム生地の引き合いも増えています。

 尾州のウール生地は糸作りから撚糸、製織に加えて、風合いや後加工といった染色整理技術に定評があります。三備も同様で、日本でしか出せない色合いと洗い加工後の色落ち感のデニムが好評です。このような特徴を優位性につなげます。

 和歌山で編み立てる丸編み地も注目度が高く、継続して受注があります。今後、さらに増えていくとみています。

――今後の戦略・強化策について。

 欧米向けを中心に、天然繊維を原料とする生地の拡販を進めます。また、中国向けはファッションだけでなくスポーツ向けの販売を増やすべく豊島国際と連携しています。当社独自の機能性を付与した糸や環境配慮型の糸軸で、生地だけでなく製品までの販売も視野に動いています。

 当社の、時差を感じさせないタイムリーなコミュニケーションや、市場・生産背景をしっかり把握し、適切に対応することで力を発揮します。販売先に安心して取り組んでもらえるよう、提案精度の高度化も図ります。

 欧州全域に販売を増やすため、協業先とともに必要な認証の取得も進めます。

(毎週月、火曜日に掲載)