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合繊スポーツ・アウトドア素材/海外市況は回復継続/素材軸での提案が重要に

2025年07月23日 (水曜日)

 衣料用合成繊維にとって最重要マーケットの一つであるスポーツ・アウトドア分野。2025年度も海外向けの市況が回復基調にあるなどでおおむね堅調に推移している。ただ、競争激化が続いていることから、高付加価値品を主力とする日本の合繊メーカーとして、素材軸での開発・提案が一段と重要になったとの認識も強まった。(宇治光洋)

 スポーツ・アウトドア素材は現在、26秋冬への販売と27春夏・秋冬に向けた提案と開発が本格化している。特に欧米市場は流通在庫の整理が進んだことで市況の回復基調が続く。このため日本の合繊メーカーの海外向け生地販売が堅調だ。また、国内市場は業績好調な有力アパレルへの販売が底堅い。

 帝人フロンティアは25年度(26年3月期)も主力の高バランスポリエステル長繊維ニット生地「デルタ」の好調が続いているほか、中空8フィン断面ポリエステル長繊維「オクタ」による中わた兼用生地やフリース調生地、極細繊度ポリエステル加工糸によるスパン調生地「アスティ」などの販売が伸びた。

 旭化成アドバンスもナイロン高密度織物の販売好調が続く。透湿防水生地も、北陸地区の染工場との取り組みでフィルムから開発した高性能・高強力タイプを「インパクトΣ」のラインアップに加え、販売が本格化した。国内市場も得意とする有力スポーツ・アウトドアブランド向けがインバウンド需要の追い風もあって好調。

 クラレトレーディングはスポーツ・アウトドア向け販売の70~80%が縫製品となるなど川下戦略が一段と加速し、25年度上半期(1~6月)も計画通りに推移したもようだ。国内の有力取引先スポーツ・アウトドアブランドがインバウンド需要も含めて販売好調となっていることが堅調な受注につながった。

 一方、スポーツ・アウトドアの“ブーム”は一巡しつつあるとみるのが東レ。アウトドアは底堅さがあるが、アスレチックやゴルフは勢いが鈍化した。今後はスポーツ素材をカジュアル分野にも落とし込むことが重要になるとの考えだ。このため新たにコットン調ポリエステル短繊維生地「フィールコット」を開発した。特殊ポリマーによってピリングの発生を抑える。スポーツカジュアルなど幅広い用途に提案する。

 帝人フロンティアもポリウレタン弾性糸非使用の軽量ストレッチ生地「ソロテックスデライト」を開発した。こちらもスポーツ・アウトドアだけでなくカジュアルやレディース用途などにも提案し、取引先の拡大を目指す。

 日本の合繊メーカーは高付加価値ゾーンへの特化を進めているだけに、独自性のあるポリマーや原糸など素材を軸にした開発と提案も重要になる。クラレトレーディングは優れた速乾性とドライ感が特徴のシンジオタクチックポリスチレン(SPS)繊維「エプシロン」の商品化を進め、ここに来て採用が始まった。ポリアリレート系繊維「ベクトラン」をリップストップ生地などアウトドア用途に提案することにも力を入れる。