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この人に聞く/東レ・ライクラ 社長 武内 文男 氏/目指すは“スパイク型”

2025年07月24日 (木曜日)

 6月25日付で就任した東レ・ライクラの武内文男社長に今後の戦略を聞いた。

  ――東レ・ライクラの現状をどのように見ていますか。

 2024年度(25年3月期)は営業増益となり、25年度も引き続き増益を計画しています。ただ、市況はアパレル分野に勢いがなく、紙おむつ向けを中心とした衛材分野も少子化の影響で需要が伸び悩むなど厳しい環境です。そうした中、当社は東レとザ・ライクラ・カンパニー(ライクラ社)のジョイントベンチャーとして、両社の強みをともに生かすことができます。

 昨年、社名を「東レ・ライクラ」に変更したのもその一環でした。ポリウレタン(PU)弾性糸「ライクラ」のメーカーとしての企業アイデンティティーを強化し、ブランド力をさらに高めることが狙いです。日本の顧客を大切にし、関係を一段と深めることでVOC(ボイス・オブ・カスタマー)をしっかりと受け止めることで既存商品のブラッシュアップと新商品開発を進めます。また、ライクラ社を通じて当社が滋賀事業場(滋賀県大津市)で生産する高付加価値品を世界に販売することも視野に入れています。

  ――PU弾性糸は競争が激化しています。

 中国メーカーの力が強まっていますから、飲み込まれないようにしなければなりません。そこで今、“スパイク型企業”になることを社内で提唱しています。とげのようにとがった付加価値を無数に作り出すイメージです。そのために既存商品の品質をさらに高めなければなりません。製造設備、それを運用する人材、営業スタッフ、いずれもが自分の強みを徹底的に磨き、各工程・役割分担それぞれの価値を連鎖させることで全体価値を高める。そうやって“唯一無二”の製品とサービスを提供する“スパイク型”企業を目指します。

  ――高付加価値商品の開発も進みました。

 機能糸をさらに充実させます。バイオマス由来原料使いの「ライクラT―926C」も商品化しました。PU混素材からPU成分を抽出する技術も確立し、24年から滋賀事業場に試験機を導入してリサイクル技術の開発を進めています。まずはプレコンシューマー型で量産化を目指していますが、将来的にはポストコンシューマー型リサイクルの実現が目標。また、新規の用途や販路の開拓にも力を入れます。その一環としてクラウドファンディングによるボディータオルの商品化にもチャレンジしました。こうした取り組みも含めて、ライクラが世界ナンバーワンの糸だと実感してもらうことを目指します。