2025年夏季総合特集(6)/わが社の情熱/日清紡テキスタイル/シキボウ/新内外綿

2025年07月28日 (月曜日)

〈日清紡テキスタイル/猛暑でも清涼感と清潔性両立に挑む〉

 猛暑や高湿度といった日本特有の気候に対応し、快適な着心地を追求した高機能シャツ地の開発が進んでいる。日清紡テキスタイルは、汗染みを抑えつつ吸水速乾性を持つ「INFU」(インフ)、通気性を高めた「クールメソッドAT」など、清涼感と清潔感を両立する素材を次々に投入。制菌加工の高度化と合わせ、衣服内環境を快適に保つ生地で新たな市場を開拓する。

 INFUは、高濃度酸化チタンを練り込んだフルダルポリエステル糸と独自の織り・編み、加工技術で開発。汗染みを目立たせず、吸水速乾性に優れる。第三者機関によると、水分蒸散率は通常素材比35%増、汗染みの視認等級は4級。形態安定性や防透性も高く、手入れも容易で安心感がある。

 クールメソッドATは“ハニカム風織り構造”による高通気シャツ地で、通気性は一般のシャツ比で約5倍。衣服内温度も2℃低下する社内試験結果がある。点接触構造で肌離れが良く、綿100%でありながらもノーアイロンに適した織り構造によってビジネスシャツとしての“きちんと感”を出しつつも快適性も保つ。

 さらに、汗臭や菌の繁殖を抑える「PHコントロール・ウィズ・AGフレッシュ」も開発。銀ナノ粒子を繊維内部に浸透させ、洗濯耐久性のある制菌効果を発揮する。INFUやクールメソッドATと組み合わせることで夏場でも清潔さを保つ。シャツだけでなくユニフォーム分野への用途拡大も見据える。

〈シキボウ/用途開拓進む「コットレジン」〉

 シキボウは、従来廃棄されていた綿素材をセルロースマイクロファイバーとして再資源化した「コットレジン」により、新たな用途開拓を進めている。ポリプロピレン(PP)樹脂と混合することで、プラスチック製品の物性を大幅に高めつつ、石油由来樹脂の使用量削減も実現。現在、自動車、家電、容器など多様な分野での採用に向けた試験が進んでいる。

 コットレジンは独自開発の装置によって綿素材をミクロサイズに粉砕。コットレジンを35%配合したPP材では、標準PPと比べて引っ張り強度が約1・6倍、曲げ強度が約1・8倍に向上。荷重たわみ温度も105℃から150℃へと高まり、弾性率や耐熱性も優れる。

 さらに、摩耗性の向上や成形収縮率の低減といった特性も備える。補強材として一般的なガラス繊維などの無機物と異なり、しなやかなコットレジンは成型機への負担が少ない点もメリットだ。

 環境面でも優れ、原料のリサイクルに加え、バイオマス原料を活用することで石油由来樹脂の削減に貢献。バイオマス度35%の製品では「バイオマスマーク」も取得している。

 装置のあるシキボウ江南(愛知県江南市)を通じて愛知県の「あいちサーキュラーエコノミー推進プロジェクトチーム」に参画。「業界全体で協力し、消費者にもリサイクルへの意識を高めるきっかけをコットレジンで創出したい」としている。

〈新内外綿/日本の杢糸の名付け親〉

 国内繊維業界で広く知られる杢(もく)糸。その元祖であり、「杢糸」の“名付け親”ともされるのが綿紡績の新内外綿(大阪市中央区)だ。

 今からさかのぼること半世紀前の1970年代に同社の社員が米国に市場研修に行った際、杢調のスエットやむら杢のTシャツに出会ったことが同社の杢糸開発のきっかけとなった。

 近年、マーケットは作り手に“環境”に配慮した生産を求め、さらに日本市場では個性のあるものを少量で供給してほしいというニーズが強まっている。こうした市場に杢糸の潜在的な商機は拡大しているとみられる。

 その理由は杢糸ならではの製法にある。まず杢糸の強みの一つは、環境に配慮した製造工程だ。同社によれば「通常の染糸工程の5~50%の染めで表情が出るため、コストが下がり、環境配慮にもつながる」と言う。もう一つは発注者それぞれのオリジナリティーを糸で表現できる点だ。番手・色目・混ぜ方で、唯一無二の商材が生まれるため、糸からの個性づくりがしやすい。

 同社の定番杢糸といえば、グレー杢糸「GR7」に代表されるGRシリーズが有名だが、カラフルな杢糸として、ロングセラーの商材「ボタニカルダイ」がある。植物や果実といった天然色素を活用したオーガニックコットンを使った杢糸で、海外でも一定の需要を開拓している。

 同社の田邉謙太朗社長は「糸から新たな市場のトレンドを作りたい」と述べ、「今後も新たなカラー杢を開発してバリエーションの拡充に力を入れる」考えを示した。現在は、春夏向けの素材が多いため、新たな秋冬素材として獣毛混の新たな杢糸などの開発に力を入れる。