2025年夏季総合特集(7)/わが社の情熱/ボーケン/カケン/QTEC/ニッセンケン
2025年07月28日 (月曜日)
〈ボーケン/“広さ”と“深さ”追求〉
ボーケン品質評価機構(ボーケン)は、試験・評価分野での高い専門性と技術力をベースに事業領域を拡大する“広さ”と、加工剤から最終製品、さらに品質支援などサービスまで含めてサポートする“深さ”を追求する。
ボーケンは、ユニチカから試験・評価事業子会社であるユニチカガーメンテック(UGT、大阪府貝塚市)の全株式を取得し、9月1日付で子会社化する。UGTは人体生理測定やサーマルマネキンなどによる最終製品の品質評価に高度な専門性を持ち、標準化されていない機能性・快適性評価が強みだ。
UGTとはこれまでも業務提携関係にあり、気化冷却性や持続冷感性の試験・評価方法を共同開発してきた実績がある。「今回の子会社化によって、加工剤から材料、製品までの一貫評価体制を一段と強化できる」(吉岡陽一郎機能性事業本部長)。
近年、要求が高まっている環境配慮設計を支える試験技術開発にも挑戦している。島津製作所とMALDI―TOF質量分析計を使用した再生ポリエステルの鑑別技術を共同開発した。今後は再生ナイロンの鑑別技術にも取り組む。
品質支援事業では、信州大学LCA人材育成研究に参画し、カーボンフットプリントの手順作成に取り組む。
〈カケン/DXでミスない仕組み作り〉
カケンテストセンター(カケン)は、デジタル技術で企業を変革するDXを加速している。2025年度が最終の中期経営計画で「100年企業への挑戦」を経営方針に掲げ、その中でDXの推進を方向性の一つに設定した。北陸検査所から取り組みを開始し、成功事例を他の拠点へと広げていく。
試験・検査には、顧客からの依頼、受け付け、実施する試験の判別、実際の試験、報告書作成といった大きな流れがある。「試験結果の記録を紙に記入するなど、手作業も多い」とし、紙の電子化から取り組んだ。効率化に加え、「ミスを起こさない仕組み作りで顧客満足度向上につなげる」とする。
成果は確実に上がり、ペーハー測定器ではDX化によって作業時間が77・7%削減できた。検査機器の点検記録もデジタル化を進めている。独自のシステムを使って見える化を実現したが、日常点検のDX化は「現場から上がってきた意見を取り入れた」と言う。
25年度は北陸検査所の実績を横展開する年となる。見学に訪れる拠点もあり、北陸検査所は「絶対にやり遂げるという気持ちで臨んでほしい」と助言を贈った。全体のDX化完了の時期は未定だが「3年後にはデータをカケン内外で共有できるようにしたい」と話した。
〈QTEC/JASTI監査、実績とサポートで〉
日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、繊維産業の監査要求事項・評価基準「JASTI」の監査機関として存在感を示している。監査員の充実に加え、安心のサポート体制で信頼を獲得している。顧客から“選ばれ”、既に北海道から九州まで多くの企業の監査を終えている。
JASTIは今年4月から運用が始まり、現在QTECでは監査員を東京試験センターに7人、福井試験センターに1人、大阪試験センターに4人、四国試験センターに1人(大阪と兼務)配置。今夏には名古屋試験センターなどにも人員を配置・拡充し、16人で対応する。
既に多くの監査を終え、アパレル関連に携わる企業はもちろん、アパレル以外の繊維関連企業からも問い合わせが増えている。
幅広く声が掛かる理由はサポートにある。ホームページで分かりやすく説明しているほか、電話やメールで相談に応じることなどが信頼につながっている。また、長年にわたる縫製技術指導や検品技術指導を実施し、「工場を見る目」を養ってきたことも大きい。
今後は、JASTI監査の重要性を小売業やアパレル企業、商社などにも伝えることで「日本の繊維産業全体の信頼性・競争力が高まれば」と話した。
〈ニッセンケン/研究開発力を強みに〉
ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)は、研究開発に情熱を傾けている。他の検査機関にはできないことや新分野に進出することが成長の原動力になると捉えるためだ。獣毛鑑別技術のJIS化といった成果も出ており、研究開発力を強みに変える。
研究開発に継続して取り組んできた成果は既に顕在化している。その一つが、ニッセンケンが開発した獣毛鑑別の特許技術だ。電気泳動法を応用した技術で、「JIS L1030―5」として制定され、先月20日に施行された。光学顕微鏡では困難だった獣毛の高精度での鑑別が可能になった。
フーリエ変換型赤外分光による測定とケモメトリックスを組み合わせた同系異種繊維の鑑別技術も研究開発から生まれた。キュプラ繊維とリヨセル繊維などの判別ができるようになったほか、再生ポリエステルの鑑別もできる。
「エコテックス」事業を軸とするライフアンドヘルス(L&H)事業もニッセンケン独自の強みと言える。PFAS(有機フッ素化合物)をはじめとする化学物質の規制が強くなる中で、分析依頼への注目度がますます高くなっている。「顧客が情熱を持ってモノ作りを行っており、われわれも情熱で応える」とした。