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大和紡績 注目度高まる「マーキュリー」

2025年07月30日 (水曜日)

 インフラの老朽化対策や脱炭素化の課題が高まる中、大和紡績が展開するセメント用ポリプロピレン(PP)短繊維「マーキュリー」が注目されている。

 石綿(アスベスト)の代替材として30年以上の実績を持ち、コンクリートの耐久性向上や現場の効率化に貢献するなど、建設業界の幅広いニーズに応える製品として認知が定着しつつある。

 同社は1990年代からマーキュリーを展開。石綿代替のセメント系改良材としてスタートし、当初は屋根材・壁材用のセメントボードや左官材料向けが中心だった。マーキュリーは他社製に比べ繊維長が細くて短く、均整に分散し混ざりやすいという特性がある。現在ではコンクリートのひび割れ抑制や高強度コンクリートの補強材として販路を拡大している。

 特に高層ビルの柱や梁に使用される高強度コンクリートは、火災時に内部の圧力が急上昇して爆裂を引き起こし、重大事故につながる恐れがある。これに対し、マーキュリーを混入することで爆裂を抑制する効果があり、高層建築向けの高強度コンクリート用補強材として「高いシェアを維持している」と説明する。

 近年は、十字断面形状を採用した高機能品「マーキュリーC」の販売も加速。2023年度比で販売量が倍増し、市場での存在感をさらに高めている。特殊形状によりセメントとの付着性が向上し、複数の優れた性能を発揮する。

 のり面への吹き付け工事では、材料が壁面に付着せず跳ね返るリバウンドが課題だったが、マーキュリーCを混入したモルタルは張り付き性が向上。原材料費や片付けの際の清掃労務費、産業廃棄物の処理費の削減につながる。

 また、ひび割れ部分に炭酸カルシウムを析出させ、閉塞させる自己補修の効果も保有する。軽量で配合量を抑えることによって、メンテナンスコストの低減とインフラ寿命の延長に寄与する。

 同社は次世代コンクリートの開発にも積極的だ。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「グリーンイノベーション基金事業」の一環である「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」に参画。CO2を吸収・固定化するコンクリートの性能向上に繊維技術で貢献している。